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とある銀河の物語
003 教授と博士とマティルダ
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かの陰謀に巻き込まれているとか、そんなことを考えているのかしら?」
コーヒーを飲み干し、カップをテーブルに置く音が聞こえた。
その音に誘われたように、顔を上げる。
「なぜです?」
静かに立ち上がり、コーヒーテーブルをまわってカウチに座っている私の足元のカーペットに直接横座りした。
左ひじをカウチに乗せ、私を見上げる。
「覚えていない、この位置関係?十二年前。あの時はカウチではなかったし、こういう部屋の中でもなかったから・・・」
「・・・もっとヒントをください・・・」
こういう部屋の中でも無かったって、いったいどういう部屋の中だったんだ?
だいたい、十二年前と言ったら、私がアカデミーに入学した年だ。
彼女との、いや、女性との出会いなんて、これっぽっちもなかったような・・・。
「図書館」
そりゃあ読書は好きだから、入学当初から結構行っていたけど・・・・。
「今日もそうだったけど、あなた、私の事分からなかったわねぇ、最後まで。」
「さ、最後まで?」
「ま、十二年前は私もそんなに知名度は高くなかったけど、少なくともアカデミー内では結構知られていたのにね。」
最後までって、いったい、俺は何をしたんだ?またパニックに陥りそうだ。
「ひ、人違いでは、ないですか?」
「うーん、まだ思い出さないか・・・じゃ、立って。」
立った私の場所に自分が座って、
「ここに座ってもらえる?」
と彼女が座っていたカーペットを指す。黙って従った。
「・・・どう?」
「ど、どうといわれても・・・」
肩をすくめながら答えた。どうやら彼女は明確に覚えているようだ。だが私の記憶にはまったく無い。
大体この位置、女王様と僕の位置関係だろう。
「これなら、どう?」
そういわれて見上げると、黒縁の大きめの眼鏡をかけ、長い髪を後ろで束ねた彼女がいた。
「・・・・・・え?」

アカデミー内では今までにない高い評価を得た卒業論文だったが、世の中の反応は厳しすぎるくらい厳しいものだった。
画期的かつ具体的、現実的な内容でまとめたつもりだった。
MBTをエンジニアリングに応用する事によって、大幅な手順とコストを削減する事ができる。
それによってできる余剰資金と人材、そして時間の価値はいかほどのものとなるのか。
無から有が生じたに等しいではないか!!
めまいがするほどの怒りで、我を忘れていた。
どのくらいこうしていたのか、気がつくと若い青年が自分のだろう、男物の大きめのハンカチで私の手を拭っていた。
怒りに任せてコーヒーの入った紙コップを握りつぶしてしまっていたらしい。
「ほおって置くと、痕が残るかもしれません。ちょっと待っていてください。」
足早に立ち去り、一分と待たせずに充分にぬれたタオルを持って帰ってきた。私の手を手早くくるむ。
「し
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