003 教授と博士とマティルダ
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瞬にして命を奪われた。爆弾テロだ。正確には爆弾テロで狙われた航空機が墜落して巻き込まれたのだ。
当時十六歳になったばかりの私は、学校の授業のスケジュールとの折り合いがつかず、また、それほど近い親戚でもないため、一人家に残っていた。
奨学金と保険金でそれほど惨めでない生活を送りながら、生前の両親の口癖だった、「お前と同じ名のアカデミーがある。そこには入れるくらい頑張れ。」をひとつの目標とした。
それが本当に両親の願いだったのかどうか、今でも分からない。また、知るすべもない。
それでも何とか合格し、上級アカデミーで歴史学の研鑽を積み、そのまま教授のアシスタントとしてアカデミーに残ったのが五年前。二年前から体調の優れない教授の変わりに、あくまで臨時の立場で教鞭を取っている。あからさまに世話になったと言うことはないが、要所要所で助言をしてくれた恩人の席を、いかなる理由であれ取りたいとは思わなかった。
そこそこに無難に日々を送らせてもらっていた。
政情不安な星系があちこちにある中、辺境に近いここはまだ平和だった。
今日の昼までは。
部屋は空いているとはいえ、掃除もしていないのにいきなり使わせるわけにもいかない。
時間もなかったので、W何でも屋“を呼んで掃除をしてもらった。
掃除をしてもらっている間に三人で買い物に行く。
「このままレストランにでも行きますかね?」
「うーん、それはまた、次の機会に。たぶんマティルダはずいぶん疲れていると思うから、すぐに休ませたほうがいいわ。」
「・・・本当の母親みたいな言い方ですね。」まったく、余計なことを言ってしまったもんだ。
「ええ、本当の母親よ、誰がなんと言おうと。」
まっすぐ私の顔を見て言った。気負いのない、自然な目をしていた。
「そうか・・・そうですね。」
女の子が不思議そうに見上げている。
質素だが意外なほど満足感のあった夕食を終え、眠そうに目をこする娘を無理矢理シャワーに連れて行った。
「一緒に入ってあげたほうがいい、とにかく今日は。使い方は、分かりますね。」
「ちょっと古いタイプね、いい感じだわ。大丈夫だと思う。」
「ここにタオルを余分に置いておきます。」
「ありがとう。・・・同居人でいる間は、のぞきに来ちゃだめよ。」
「・・・・・・・・」
コロンビアにでもするか。彼女はコーヒーは好きだろうか?
否が応でも、思いの中に割り込んでくる。確かに魅力的な女性ではある。
確か私がアカデミーに入学したときはすでに上級アカデミーに行ってたはずだ。
三才か、或いは四才年上と言うことになる。すごい美人というわけではないが、やはり一芸に秀でている人物は輝きが違う。
確固たる実績と名声がある。富だって、それこそ使いきれないくらいあるだろう。
その気になれば高級ホテルを買い
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