第三章
22.ロンダルキアの目
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雪が、強く降っていた。
ローレシア王・ロスにとっては三度目、サマルトリアの王子・カインにとっては二度目、荷物持ちの兵士たちにとっては初めてのロンダルキアの地。視界不良のなか、歩みを進めていた。
「魔物に遭遇しないな」
風は強くないので、特にロスも声を張っていない。
「王たちの討伐により絶滅したのでしょうか?」
「激減させたのは間違いない。ただ絶滅に追い込めるほどは殺せていなかったはずだ」
「この雪が我々の姿を隠してくれているのではないでしょうか?」
「それならいいんだが」
ロンダルキアへの洞窟でもほとんど魔物を見なかったが、抜けてからも魔物に遭わないのである。
荷物持ちや雑用のためにロスが連れてきた五人の精鋭兵士たちは希望的観測を述べているが、一番後ろのカインは首をひねっていた。
「どうだろ。ロンダルキアに住んでいる魔物なら、雪でもある程度遠くまで見える目を持っていても驚かないけどね。不気味だよ」
ロスはそれを受け、「いちおう警戒を強めるように」と言うと、前方を向いて歩き続ける。
しばらくして、カインから声が届いた。
「ロス。今、何か聞こえなかった? 遠吠えみたいな」
「いや、俺には何も。だがお前が言うなら間違いなさそうだな」
ロスが足をとめ、一同それに続く。
しかし、しばらくその場にとどまっても何も現れなかった。
遠吠えに聞こえたものは魔物ではなかったのかもしれない、ということで、またロスを先頭に徒歩を再開した。
やがて。
穏やかだった風が、突然強く吹き始めた。
「なんだ? 急に」
穏やかな晴天がずっと続いていたハーゴン討伐時とは、明らかに違う。
今回はロンダルキアに入ってまだそんなに経っていないのに、とてつもない悪天候がロスたちを襲っていた。
真っ白。
視界は不良どころの話ではない。完全にゼロとなった。
吹き付けてくる風雪。目を開けているのも厳しい。
「もう少し固まって歩こう!」
後ろにそう叫ぶも、耳に入るのは激しい風音。
返事は聞こえない。
「おい! みんな! 聞こえているか!?」
後ろの景色はただ白のまま。カインの姿も、兵士の姿も見えない。誰の姿も見えない。
「これは……」
何も見えず、吹雪く音以外は何も聞こえない。
完全にホワイトアウトする中で、ロスはしばし立ち尽くすと、やがて仲間の姿を求めてさまよい始めた。
◇
視界が真っ白になると、サマルトリアの王子・カインは口に両手を当て、声を張り上げた。
「ロス! 兵士さん!」
しかし返事はない。
聞こえるのは吹雪く音だけだった。
「うわー。何も見えないな」
ロ
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