001 最終試験
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BTに連結されている私たちの最高度の機器を使って、およそ一千光年が限界である。一千光年以上の距離を“跳んで”見たものはいない、といった理由はここにある。
「また寝てたのか。よし、これからお前を“ナップ”と呼ぶことにしよう。」
「・・・イエス・サー・・・」
降下間際に通信室に呼び出された。ほかの訓練生の笑い声を無視しようと努力しているうちにどうやら眠ってしまったらしい。またランに起こされた。これから初めての単独ミッションなのに、我ながらいい度胸である。
「“ナップ”ね。なかなかいいじゃない。似合うわよ、かわいくて。」
「イエス・マァム。自分も気に入りました。」
何で二人が一緒の部屋に・・・ていうか、コンビなんだよなぁ、この二人。・・・わかってるさ。
「頑張ってね、ナップ。本当に五日で終わらせてもいいのよ。」
「イエス・マァム。頑張ります。」
画面越しにクリス特別教官が席を外す気配が伝わってきた。残念ではあるが、最終試験を前にこんなにクリス特別教官と話した訓練生って、他にいないんじゃないのか?
「・・・おい、ほんとうにいいのか?」
「・・・あ、はい、イエス・サー。何とでも好きに呼んでください。」
「あほぅ、ミッションのことだよ。本当に六日でいいのか、聞いてるんだ。」
あれ、なんか“教官”やさしくないか?
「い、イエッサー。“歌って踊れるエクスペンダブル”を目指してますから。」
な、ナニを言っているんだ、俺は!
「ふん、まぁ、いい。初めての単独ミッションだ。俺に怒鳴られることも無く、好きなだけ考え事が出来るなぁ。」
もしかして、心配してくれているのか、俺のことを? この“教官”が?
「申し訳ありませんでした。サー。ミッションに没頭します。サー。」
「ふん、俺はな、考えることが悪いことだと言っているわけじゃないんだぜ、ナップ。」
「イエス・サー。」
「ふん、本当にわかっていりゃ、いいんだがな。」
「・・・・・・」
なにが言いたいんだろう・・・。
「おい、ナップ。」
「イエス・サー!」
聞き逃すなよ、何か、重要なことを、独特な、あの訳のわからない言いまわしで言うに違いない。
「今度モニターに顔を出すときはちゃんとよだれのあとを拭いてからにしろ。」
「・・・アイアイ・サー。すいません・・・」
「ふん」
暗くなったモニターに、よだれのあとの残った、間の抜けた俺の顔が映っていた。
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