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とある銀河の物語
001 最終試験
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よく消えてもらう。そんな要員にな。」
この訓練キャンプでは、ただ単に“教官”と呼ばれているこの男も、クリス特別教官と同じくらいの有名人だ。それに人と状況を見て皮肉や嫌味を言う技術は、この宇宙でも右に出るものはいないだろう。特に口元に笑みを浮かべながら、オブラートにくるんだような言い方で言われたときには、誉められているんじゃないかと錯覚するくらいだ。それが嫌味だったと気づいたときの落差といったら・・・。
「・・・なあマール。今回はすまなかった。こちらの連絡ミスで通知が行かなかったんだってなぁ。今日からR&Rを決め込んで毛布に包まっていたところを叩き起こされ、こんな朝早くから呼び出されて、集められて、すまんなぁ。まだ、毛布が恋しいか?なんなら、今から寝台部屋に帰って、R&Rの続きをやってくれても、いいんだぜ?」
「ノー、サー。申し訳ありませんでした。」
この“教官”にだけは“聞いているフリ”は通用しない。絶対に。
「俺が言うのもなんだがよ、この“軍隊式”ってのはどうも性に合わないんだな。格式ばってて。特に今回はこちらのミスだし、何の罰則も適用しないからよ、戻ってくれても俺としちゃあ・・・」
「ノー、サー、申し訳ありません。注意散漫でした。」
「プッシュアップ百だ。」
「イェッサー。」
時間もないし、この程度で許してくれるのかな?だとしたらラッキーだぜ。何しろ俺はこの手の“罰”が人並みはずれて多い。聞いていないわけじゃないんだが、頭の中でいろいろな考えが勝手に回りだしてしまうんだ。これは俺の特技じゃない。やばいよ、最終試験に集中しなくては・・・
「どう、ウォルフ、こちらはもうOKだけど。」
「よう、クリス。もう二、三分待ってくれ。」二十一、二十二、あからさまに俺を見ながら言わないでくれ。二十三・・・
「じゃ、その間、ファイルを見せてもらおうかな?」
やはり来た。来てくれた。最終試験恒例の「Touch by Angle」。
何か特別なことを言うわけではない、らしい。ただちょっと顔を出して、訓練生のファイルを見て、「へぇ」とか「ふーん」とか、ちらっと訓練生の顔を見ながらつぶやくだけ、らしい。初めて、この最終試験が実行されたときもクリス教官は同じことをした、らしい。そして無事に実戦任務を終え帰還してきた訓練生が、あの時「まるで、天使に触れられたみたいに」力がわいてきたと感想を漏らした、らしい。この訓練生はもうこの星系におらず、生きていればどこかの部隊で戦闘指揮をとっているのだから確認のしようがない。が、ともかくそれが訓練生の間に伝聞し、「Touch by Angle」と呼ばれるようになった。もはや儀式と化している。
いつもの半分の時間でプッシュアップを終え、直立不動の体制に戻った。なにがなんでも俺の番には体勢を整えておかないと。それに、ほん
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