暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十四話 カストロプ動乱
[1/9]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦486年6月10日08:00
カストロプ星系外縁部、銀河帝国、銀河帝国軍、メックリンガー分艦隊旗艦アイツヴォル
ジークフリード・キルヒアイス

 この星系…カストロプ星系に来るのに時間がかかったのには理由があった。事故死したカストロプ公の事故調査の結果が出るのを待たねばならなかった事。公の跡を継ぐ予定のマクシミリアンと内務省とでのやりとりの結果を待たねばならなかった事。内務省はマクシミリアンに対してカストロプ家の名跡と代々所持していた財産については相続を許可したものの、前カストロプ公が財務尚書在職中に得た物については、調査の後相続の可否を決定する、と通達した。前カストロプ公が生前に何をしてきたかを考えれば本領安堵だけでも有難いと理解できる筈なのだが、彼はこの決定に反発したばかりか、内務省と財務省から調査の為に派遣された官吏の一人を意思表明の為に殺害するという暴挙を行った。調査団の団長はマリーンドルフ伯という貴族で、カストロプ家とは遠縁にあたっていた。温厚で公正明大という人柄を買われての人事だったが、これが裏目に出た形となった。伯は人質にされ、今では生死すら不明だった。この状況に帝国政府は激怒、マクシミリアンは反逆者とされ討伐される事が決定したが、この決定までに半月を必要としたのだった。

「生死不明の人質が居るというのは難儀だな。シュムーデ提督も、それが気になって思うように戦えなかったのだろう」
「芸術的な言葉選びだな参謀長」
「玉虫色とでも言いたいのかな、メックリンガー提督」
ケスラー参謀長とメックリンガー提督は暗に先行したシュムーデ提督を非難していた。だが、非難するのはお門違いという状況がシュムーデ艦隊から伝えられた。シュムーデ艦隊は一万二千隻、事前の情報によるとカストロプ家の艦隊は八千隻、余程へまをしない限り負けない筈だが、シュムーデ艦隊は四割の損失を出して敗退していた。
「シュムーデ艦隊からの情報によりますと、一万隻程の別動隊に後背を取られて前後より挟撃された…という事です」
参謀長は前言撤回とばかりに天を仰いだ後、私に向き直った。
「一万隻の別動隊だと…キルヒアイス大佐、どう思う」
「はい参謀長。調査中断前までの情報によりますと、カストロプ艦隊は約八千隻の兵力を擁している、という事でした。雇い入れたか、以前より別に兵力を隠匿していたのではないでしょうか」
「そう考えるのは分かるが…大佐、一万隻だぞ?隠匿は難しいだろう。雇い入れたと言うなら宇宙海賊あたりだろうが、それ程の兵力を持つ海賊など聞いた事がない。提督はどう思う」
「今は事実だけを見ようではないか参謀長。シュムーデ艦隊は敗退し一旦後退、敵は一万八千隻。それに比べ我が方は九千隻…冷静に考えれば一度後退し援軍を乞うのが上策だろうが、それはミューゼル閣下や上級司令
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ