暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十四話 カストロプ動乱
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
見せつける様に、星系の第四惑星軌道に沿って周回を始めた。カストロプ本星は星系の第三惑星だから、敵にとっては至近といっていい。シュムーデ艦隊の戦闘可能な残存艦艇は五千五百隻、本星近傍にて待機している敵集団にとっては手を出すかどうか微妙な兵力差といえる。シュムーデ艦隊もただ周回するだけではなく、時折カストロプ本星に向けて移動する素振りを見せたりして敵集団を誘っている。我々は星系第八惑星にあたる巨大ガス惑星の衛星軌道を回る小惑星帯に潜んで、中継用に派遣した巡航艦を介して様子を伺っている。

 「シュムーデ艦隊、十周目の軌道周回に入ります」
私の報告にケスラー参謀長が深く頷く。
「そろそろ痺れを切らす頃じゃないか。一度は敵も突出しかけたのだからな」
「かもしれませんね。ですが、おそらく敵はシュムーデ艦隊に援軍がいないか様子を見ているのでしょう。敵にすればシュムーデ艦隊の行動は牽制行動にしか見えない筈ですから」
「だろうな。敵がどう判断するかだ。シュムーデ艦隊が援軍を待っていると思えば、本隊か別動隊から星系外に向けて哨戒部隊を派遣するなりして此方の援軍の有無を確認しようとするだろう。無いと思えば別動隊が挟撃に向けて動き出す筈だ。メックリンガー提督、気をつけてくれ」
参謀長の言葉にメックリンガー提督が承知とばかりに微笑した。
「こちらも星系外縁には哨戒艦艇を派遣している。動きがあればすぐに報告が来るさ」
「流石だな。助かるよ」
艦橋の中はとても静かだった。隠れている、という事が艦橋で働く者達の気分をそうさせているのだろうか、私語を交わす者はほとんど居ない。休憩の為のコーヒーセットを従卒に頼もうとした時、この静寂を破るのは気まずいとばかりにオペレータが静かに報告の声を上げた。
「哨戒第四グルッペより報告です…哨戒第ニグルッペヨリ通報、我レ、敵ト思ワレル集団ヲ発見。第六惑星付近、オヨソ一万隻規模。味方本隊カラ見テ星系公転面ノ反対方向ニ位置…中継終ワリ。以上です」
とうとう現れた。公転面の反対側…太陽を挟んで向こう側という事か。参謀長が大きく息を吸い込むのが聞こえた。
「現れたな」
「はい」
「全艦に通達、艦隊はこれより発見した敵の追撃に移る」
「了解致しました……艦隊全艦に告ぐ!これより第八惑星衛星軌道を離脱し進撃陣形に移行する。再編後、敵艦隊の追撃に移る。かかれ!」
ケスラー参謀長は満足そうに頷いた。艦隊の指揮官は大抵の場合、指示に関しては多くを言わない。指揮官の指示を噛み砕いて通達するのは参謀の役目だった。これが上手くいかないと命令を再度下令する事になるし、指揮官との意思疎通が出来ていないと見なされる。ラインハルト様も参謀時代はつくづく大変だっただろう…。



6月17日13:00
オーディン、ミュッケンベルガー元帥府、宇宙
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ