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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-終幕-
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のに、その足を強く縛り付けられたように上手く動けない。
 このまま感情に任せてしまおうと思ったその口を、祐介の言葉が遮った。

「ストップ。口は災いの元だ」
「あいつの魔術か?...いやこの場合は深層意識か。人を呪わば穴二つってのを逆に利用した。いやこの場合はたまたまそうなっただけか。不味いな。これどうやって解除すんだ?代表、いや出来れば柳さん辺りに押し付けたいけど...無理だな。紫式部さんに言っておくか」

 いつの間にかこちらに背を向けていた祐介の顔がこちらに向き、指で自分の額の辺りをぐるぐるの描いたと思ったら何やら不思議なことを言って同じくいつの間にか出てきた石に腰かけた。

「祐介?」
「ご両親の事は、よく分からない。けど、まぁ。色んな人は見てきた。明日が分からない環境で必死に生きる人、中には卑怯な手を使ってでも生きようとする人、その過程でサーヴァントを強く憎むことになった人も」

 諭すように返してきた言葉はどこかふわふわしていた。何も分からないくせに。そう言いたくもなってしまう。
 なぜ彼がまるで人間同盟を擁護するような発言をするかはわかる。同じマスターに苦しめられた被害者同士、わかることがあるのだろう。けど、それがどうしたと思ってしまう。

「自分で縁を切って来た親を信用しろって言いたいの?」
「そんな説教臭いことは言わない。別に許したくなければ許さなければいい。彼等の行動だってとても褒められたものでは無いし。ただ、理解はして欲しい。難しいとは思うけど、どんな人間の行動にも理由は存在するんだ。葵が紫式部を信用するように」

 その返答として祐介の口から出てきたのはどこか悲しそうな言葉だった。
 違う。悲し《《そうな》》ではない。悲しい言葉だ。祐介の本心は自分が両親や同じような人達を憎んで欲しくないのだろう。その中には祐介本人も含まれる。アタランテは祐介の両親がどうなったか、なんて言わなかった。おそらく知らないのだろうが、彼女の説明からおおよそ予想はつく。
 けど、希望はあった。もう既に亡くなった深澤氏と彼のそばに居た男の発言がこの返答の根幹にはある。たとえそれが綺麗事だと言われても、そういうのだろう。
 綺麗事で済めば一番いいのだから。

誰も理解できない人(正義に生きる人)は、どうしても行き過ぎた行動をする。それは、自分が正義だっていう免罪符を得てしまうことでブレーキを失ってしまうからだ。それは君の言う奴らと同じ...いや、それよりタチが悪い。なにしろ声だけの少数派より武力でなぎ倒せるわけだからな。《《1人の友人として》》君には、そんな人になって欲しくない。ただそれだけだよ」
「祐介...」

 人の気持ちを理解出来ない人は行き過ぎた行動をする。そしてそういう人はその事に気付くのが難しい。
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