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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾陸-
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、何の理論も心の準備もなしにこう言ってしまった。

「なら、私が娘さんを救いましょう」
「何...!?」
「私が貴方に救われたように。私が貴方の娘はさんを。葵さんを救います。どんな手段を使ってでも。必ず」

 ああ、言ってしまった。
 何を言っているんだと、自分で自分を怒りたくなったが、どうしてもそれが本心だという自分を、縛り付けることも、怒ることも出来なった。
 娘を失う悲しみは、よくわかる。しかし彼らはまだ失ってなどいない。救える手がある。なのに、それをしないのはとても辛い。考えたくないほど辛いことだ。だから、本心から救ってやりたいと思った。家族は、みんな一緒にいるべきなのだから。

「ありがとう。ありがとう。■■さん...」
「礼は不要です。これは、恩返しなのですから」

 そう言って自分は、人間同盟から離れた。
 悪魔に対抗するには力がいると、知っていたから、あの優しい人たちに、それを求めるのは酷だと知っていたから。
 その時初めて、自分はあれほど嫌がっていた死にそこまでの忌避感が無くなっているのを知った。

 自分が求めるのは、悪魔を倒す力。その為に天王寺と名乗る男を探した。
 人間同盟の間での都市伝説の一つ。悪魔殺しのエクソシスト。悪魔と同種の力を使いながら、心までは悪魔に犯されていないという伝説の人物。
 都市伝説と言う通り、人伝いに聞いた話でしかなかったが、悪魔を倒すには、彼の協力を得るしかない。そう思うと、力が湧いてきた。なんでも出来るような気がしてきた。

 そしてある日、旅の途中。
 小川で顔を洗っていると、一人の男に出会った。

 天王寺達也という名前の男だった。彼は今悪魔の集団に追われている為、時間はあまり取れないが、噂で自分を探していると知った彼は自分の足で探しに来てくれたのだ。

「ああ、そういう理由なら僕も手をかそう。恩人の娘を助けたい。僕向きの(美しい)願いだ」

 満足そうにそう言った男は自分が出した茶をグイッと煽る。
 
「なら!」
「協力するとも。うん。もし君が恩人の娘を洗脳したいとか言い出したら殺すところだった」

 そう笑顔で呼吸を忘れさせるようなことを言い出したこの恐ろしさは流石、悪魔を退けるどころか殺していると言われるだけある。

「君の恩人の娘さんと僕の息子がほとんど同世代でね。うん。わかるよ。分かるとも」

 男はそう言って手元に試験管を出す。まるで手品のような手際の良さだが、実際はただの魔術だ。
 後に聞いた話だが、ガラスを用いた錬金術は基本中の基本らしい。だがそれを惜しげも無く、というより当たり前のように差し出したのは彼の素養の高さを感じさせる。

「それは...」
「僕の血だよ。これで、君をサーヴァントと同等の存在に改
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