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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾伍-
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 全てを計算し、その直後に全ての結果を吐き捨てる。こんなもの何の役にも立たない。式を特定してもそれを計算する隙はイスカンダルが与えてくれるとは思えない。それに彼の周りにいるのは彼より武勇が優れた英雄達。人としての形では、勝てない。
 しかし自分は獣。ただ一巡の本能が勝手に正答を編み出してくれる。それが正解か、求めることなんてない。それは全て、投げた後の未来が勝手に描いてくれる。

 バチバチバチ。

 三度頭を叩くように走る雷光。それが最後を決めるたった一つの答え。魔獣であり狩人であるナニかが生み出した結論。

 その間もイスカンダルは舐めていた訳では無い。彼だって当然接近する。ライダーとして当然の速度を伴って津波とかした人の波はただ一つの点を目掛けて押し寄せる。

 距離20m。

 音なんて聞こえない。そんなもの、必要ないから。

 ただ一度、それを見て肺の空気を全て吐き出した。身体が一瞬だけ、しなやかになる。

 距離15m。

 加速した馬の蹄が弾いた砂粒がこちらに届く。人の皮膚なら、それだけで傷がついたであろう。しかしその衝撃は、音よりも早く自分に相手の正確な距離を伝える。

距離10m。

 魔力が満ちた。本来なら当たるか当たらないかを放棄して考えるなら80mあっても届いた槍だ。しかし今回は投げられる距離は10mしかない。
 つまり、これが最適の距離───

「宝具、解放───!!」

─三柱の女神はそれぞれこう言った。

 クロートーはメレアグロスが高貴な人物となるであろう、と言った。
 ラケシスはメレアグロスが武勇に優れた英雄となるであろう、と言った。
 アトロポスは薪を炉に投げ入れ、この薪が燃え尽きないうちはメレアグロスは生きているであろう、と言った。

 それに間違いはなかった。彼は、高貴な人物であった。剛勇無双と呼ばれ、アルゴノーツの一人として武勇を残した。そして、その薪が燃やされるまで、死ぬことは無かった。

 彼の宝具は二つ。いずれも対人宝具である。片方は自身に、片方は敵へと向けた逸話から生まれたもの。
 一つは死を確定されたことからの因果関係による祝福という名の呪い。名を『天命受けた祝福の薪(モイライネッパーラ)』という。そしてもう一つの宝具はカリュドーンの猪を殺した逸話が昇華された対人宝具。

 名を───

神罰穿つ鏖殺の一閃(カリュドン・キリゴス)!」

 白亜の光が放たれる。
 かの腕から投げられたその槍は名を持つほど有名なものでは無い。ただ彼がそれを投げてカリュドーンの猪を殺したと言うだけのこと。だから、彼が投げなければ決して、その宝具の効果は受けられない。自身にかける宝具ではないが投影などを用いても真似出来ない。

 閃光
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