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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾伍-
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う。君は強い。だって、今までずっと、戦い続けてきたじゃないっすか」

 パリン。バリバリバリバリ!

 世界が割れる。世界を覆っていた大砂漠が風に巻き上げられる。まるで巻物を巻いていくように。

「な───に───!?」

 彼の声が、普通の人間のように聞こえる。驚きのあまり、普通の人間に戻ったのか、それとも自分の耳がおかしくなり、そう聞こえただけなのか。
 そんなものはどうでもいい。
 全身に力が入る。そして刀が刺さっていた右手もいつの間にか元に戻っている。その代わりに握られている一本の手槍。

─迷うことは無かった。

 身体が自然に立ち上がる。彼の身体が揺れ、輪郭がぼやけているが、手槍を指すべき場所は、もう決められている。

「ああああああああぁぁぁ!!!」

 喉を潰すような絶叫。それを自分が放っている。おかしくなる。いや、もうおかしい。けど、それでもわかることがひとつある。

 過去に引っ張られてばかりでは、未来に進めないということ。

「葵っ!君はっ!」

 バランスを崩して倒れそうになる彼に覆い被さるように身体を預ける。巻き上げられた彼の体に吸い込まれるように手槍が入り込む。そしてそれが彼の体を貫通するのは、当然の事だった。

◇◇◇

夢幻召喚(インストール)!!」

 自分が変わる。異質だが、もう慣れきったものだ。魔法陣から光が満ちてその光が体全体に行き渡る。
 纏うは生物の毛皮ではなく人類がそれから身を守るために作り出された鎧。
 しかしそれは強固なものでは無い。鋼色の篭手は上腕は半分ほどしか覆っていない。脚を守る防具は太ももが露出している。胸の辺りには薄い鉄板のようなものが一枚、体に沿うように加工されているのみ。それらを緑色の布で繋ぐようにひとつの防具として代わりに首元には大きなマントをマフラーのように纏っている。

 そしてカリュドーンの猪を殺した槍は彼の背丈を超える大槍。先端には小さいが返しがついており、刺さった時に肉に強く絡みつき、肉を割かなければ抜けないようになっている。
 そして腰には大槍と比べれば小柄な手槍が掛かっている。

 サーヴァント、ランサー。
 真名はメレアグロス。

 少ない魔力が腕に、槍にと伝わる。腕が弾けそうな痛みに耐えながらその槍を高く掲げて、槍投げの要領で構える。

 狙いは二点。雷を纏うように吼えるブケファラスの脳天。それからイスカンダルの心臓。霊格。
 その二つが自分が狙うたった二つの勝利までの枷。それを一撃で、穿つ。

 二点の点を一本の直線で繋ぐのは一つのパターンしかない。投げられる槍は一本。こいつには曲がることも巨大化して二点をむりやり収めることも出来ない。
 射角、距離、立ち位置、方向、風向き。

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