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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾肆-
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。それでは仕方がない。ただし余もかのマスターは大いに気に入っているのでな。譲れんものは譲れん」

 イスカンダルは難しそうに顎髭を擦りながらも勝ち気に笑う。

 どうやらお互いに長時間戦うのは望んでいないらしい。なら答えは一つ。短期決戦だ。

「だろうな。じゃあ、狩ってみろよ。征服王」

 肩に手をかけて毛皮を剥ぎ取る。剥ぎ取られた毛皮は魔力として霧散し、壊れていった『ケモノ』の身体が瞬時に『ヒト』の身体に戻る。
 残り魔力は少ない。カリュドーンの猪としての姿なら大地を踏み締めれば魔力が増加していくが、それを剥ぎ取った今、それは使用できない。自分の生命力をそのまま魔力に変換するしかない。

 そして、腰に入れていたバックルから一枚のカードを抜き取る。そこには槍を持つ槍兵の姿が描かれている。

「──告げる! 」

 魔法陣がカードから広がり自分の全身を覆うように前に突き出される。それは英霊の座への直通回路。
 全身の神経が破壊されていく。生命力を魔力としすぎた結果、壊死しているのだ。しかし止めない。止めたら負ける。負けたら葵も、紫式部も、アタランテも死ぬ。
 しかし長時間の戦いも彼女たちが死ぬ。なら答えは一つ。たった一撃の超強力な一撃で全てを終わらせる。

「汝の身は我に! 汝の《《槍》》は我が手に!
この世(聖杯)のよるべに従い、この意この理に従うならば応えよ!誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者!我は常世総ての悪を敷く者!汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ!」

─ドクンッ。
 心臓がもう心残りは無いか?と問いかける。
 死ぬかもしれない。死ぬのなんておかしいことではない。むしろ、生き続ける方がおかしい。

 負けるのは当然。負けたら死ぬのも当然。だから、この戦いで勝てたらお前は死ぬべきだ。そう呪うように心臓が鼓動する。
 それの答えは、もう用意されている。

─死なねぇよ。守るものがあるならな。

夢幻召喚(インストール)!!」

 魔法陣から光が満ちて、広がり始めた。
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