暁 〜小説投稿サイト〜
『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾肆-
[2/5]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
かる者たちも多かった。だから大丈夫。ただ翔太郎だけが早く来ただけ。そう思いたかったのだろう。
しかし翔太郎が遂に地面に拳を叩きつけて美鈴に土下座をする。
「みんな、みんな死んだ、殺された!先輩も、俺を、庇って...悪い美鈴。ごめん...許してくれ...俺が弱かったから、先輩を、守れなかった!」
その言葉に美鈴の表情が絶望に変わる。彼女にとって最後の家族の死亡。それは、自分が一人になることの同義で、本当に、酷い顔をしていたらしい。
「ごめん...ごめん美鈴。俺のせいだ。全部俺のせいだ...」
「嘘、だよね?翔ちゃん?風邪ひいて頭おかしくなっちゃったんだよね?それともサプライズ?もーダメだよ翔ちゃん。こんな時にするものじゃないから…ね?嘘だって、言って?」
信じられない。否、信じたくない美鈴が冗談を言うように無理な笑顔を作りながら『嘘』という答えを待っている。しかしその彼女の体も小刻みに震えていて、見ていられない状況だった。
「ああ、死んだんだな。深澤さん」
自分はそう言って彼らから視線を外す。これ以上は見ていられない。深澤さん一人の力で集まったこの組織も終わりだ。自分はまた怪物としてその辺をのたうち回ったあとにサーヴァントに殺されるんだろうな。
そう思って頭が痛くなりながらもどうしようかと考えて、他人事のように彼らのことを見捨てようとした。否、見捨てた。
その時は自分ことだけで精一杯だったなんて言い訳、今になっては言うことすら出来ない。酷いものだ、救われたことをさっさと忘れようとしていた。
その時だった。ガチャン、と音がしたので反射的に音がした方向を見る。そこでは翔太郎が美鈴を強く抱き締めていた。彼は俯くのをやめたから、涙を思いっきり見せながら美鈴に向かって
「ごめん。ごめん。美鈴!俺が、先輩の代わりになるから!俺が先輩の代わりに、俺が先輩になってお前を守るから...だから、許してくれ...美鈴...っ!」
声は大きくなったがその声は頼りなく、力無いものだった。それが翔太郎が負けたということを自分たちに強く教えてくる。
翔太郎が負けるような相手に、自分たちが戦ったところで勝てるわけが無い。翔太郎もこれ以上は戦えないだろう。逆にそもそも、あんな子供が戦えていた事実の方がおかしいのだ。この世界は永遠にこのままで、化け物である自分は退治されるだけだ。
そう思ってため息をつく。下らない。翔太郎もこの程度。とあしらえる相手がこの世界をこうしたなら、生きようとする行為そのものが無駄だ。どうしても生きたかったらその神の言う通りにするしかない。少なくとも、なにか意見するようなことがあれば即刻首切りだ。
「やめて。やめて翔ちゃん。翔ちゃんは翔ちゃんなんだから。お兄ちゃんになんてな
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ