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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾参-
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ん。彼は薪をどこかに隠したのでしょうか」

 納得しながらも受け入れられないアタランテに紫式部は薪の存在を言う。
 もしかしたらだが、自分が死ぬと思って飛び出したのは間違いでは無いのかもーという考えをアタランテに言ったのだ。

「その可能性もあるが...いや、敵の陣地に置くほど私のマスターは愚かではない。考えられるとしたら結果的に守ることになる者に押し付ける...ああ、なるほど。葵。汝の背中になにか貼り付けて無いか?」

 しかしアタランテはその考えに首を横に振って少し考えると。とても楽しそうな表情を浮かべて斬られた腕でこちらを指してきた。

「───っ、あり、ます。」

 それに1番反応したのは当然紫式部。若干引き気味の表情をした後に自分の背中に手を当てる。そして、ビリッと音を立てると共に「ありました!」と大きな声で言って薪をアタランテに差し出す。
 なんてことは無い。ただの薪だ。固定に使ったのかテープが薪についているがそれを除けばその辺の野山で拾ってきたと言った方が納得できるほど普通のものだった。

「え?私?」

 いや、それよりその感覚がなかった方に驚くべきだろう。アタランテの言い方を信じるなら祐介が薪を張りつけたのは切られる直前、おそらく、自分と紫式部をはじき飛ばした時だろう。その時に背中に薪を貼り付けて置いたのだろう。しかしそれなら背中に薪が乗っていると思う所か違和感すらかんじなかった。

「マスターは汝が戦えるとは知らない。私が残った時に汝を守ることは当然予想出来ただろうからな。汝に押し付けるのが最適解だったと言えるだろう」
「すみません、全く気づきませんでした」
「何、相手に気づかせないように何らかの術を噛ませておいたのだろう。実際川本も気付いていなかった」

 また楽しそうな表情をしたアタランテが紫式部から薪を受け取って眺めている。何が楽しいのかは分からないが、祐介が頑張った甲斐はあったと思える。
 そう思いながら祐介の戦う姿を見ていると不意に、背筋に悪寒が走った。まるで背筋に長い蛇が走るような。首元にナイフを突きつけられるような。生理的な嫌悪ではなく、恐怖によって形作られた嫌悪。
 振り返っては死ぬかもしれない。動いたら死ぬかもしれない。
 そんな恐怖に駆られるものの、首と腰が動いて真後ろを見る。

「...あぁ、なるほど。そういうことだったのか」

 そこに居たのは一人の男だった。しかしその姿は記憶にあるものとは違う。

「川本...さん」

 藍色の和服は燃え尽きたのか衣類の類を全くしておらず、光の刃を出していたと思われる刀は半分に折れている。
 アタランテの攻撃で刺さった矢は抜けているもののその体は穴が開いたままになっており、左半身は酷いやけどで黒く変色しており、顔
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