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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾参-
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げられた槍を前腕で薙ぎ払った後盾を持った部隊の後方に着地して、何体かちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返しながら後方に後退する。
 元より魔獣に常識は通用しない。骨、神経、筋肉。生物として当然としてあるものがこの身体には存在しない。
 流体のようにうねる腕が複数の兵士の首を一度に切り落とす。

「ぐ、がぁぁぁっ。はあっ、あああっ!」

 もちろん人体を好き勝手弄り回せば痛みは発生する。しかし繋ぎ止められた身体は変幻自在に敵を狙い穿つ。
 投げられた槍が前腕を掠り死体に突き刺さる。
 痛い。しかしその痛みが魔獣たる憎悪と欲を掻き出す。

 そうだ。俺は獣。
 アタランテが宝具『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』で変身するのとは訳が違う。

「こい、こいっ!」

 頭がこねくり回される。
 しかしその中で野生由来ではない理性が残り、体を強く強化し続ける。
 
 大砂漠を自由に駆ける。未だに生きている兵士たちを見つけたら殺すという作業をかしながらも自由に、走り回る。

「グルウオオオ!!」

 それをもう一度感じるように強く吠えた。

◇◇◇

 崩壊世界の戦いというのは基本的に一方的だ、とは誰の言葉だったか。
 要するにアレは戦いではなく略奪だ。加害者(奪う者)被害者(奪われる者)が存在するだけの簡単な暴虐。生物の捕食のようにそれがひっくり返ることは基本的にない。今でも生息域が増えたり、数を増やしている魔物すら幻想種の劣化でしかない。サーヴァントを囲んだとしても余程戦闘を苦手とするサーヴァントでなければ蹴散らされるのみだ。そしてサーヴァント対サーヴァントの戦闘が基本的に起こらないということもあり、戦闘とは持つものが持たないものを蹂躙するのが基本。
 で、あるからして真木が引き起こしている災害のような蹂躙は特別珍しいものでは無い。戦っている相手が、サーヴァントであるということを除けば。

「...」

 たった何回か腕を振り回しただけで倒れていくサーヴァント。一騎一騎が一騎当千の実力、多くの人間を食いつぶしてきたエネミー達の大群を処理できるような力を持つ。しかしそんな彼らがただ一匹の獣に殺されている。
 彼らだって馬鹿では無い。獣を囲み、空中に出たら槍を投げて撹乱。そして何より戦えない状態である自分たちを人質として止めるような手段を取ろうとする。
 しかしその大半がその行動を取る前に倒されていく。

「強い...」

 言葉が、勝手に口から零れる。
 間違いなく最強クラスとすらいえるサーヴァント達がまるで無双ゲームの雑魚兵のように纏まって倒されていく。
 狂気を感じるほど縦横無尽に走り回っては獲物を捕食するように鎧を諸共せずに食らいつき、殺していく。

「あれが..
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