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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾弐-
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ずに弓を引く。流石に弓の限界はまだ先にあるようでジジジと音を立てながらも壊れる様子はない。いい弓だともう一度思いながら溜めていた息を一気に吐き出す。
 壊れた腕が再び悲鳴をあげる。皮膚が避けて肉が引っ張られている。未だに突き刺さった矢が肉を保持してはいるが痛みは免れない。叫びたくなるほどの痛みを必死に耐える。
 これを撃てば死ぬ。流石に未練はあるがそれは当然のことだろう。それでも引くのだ。
 アポロン神、アルテミス神への加護を感じる。自分の最後に答えてくれているのか泥人形のように崩れそうな体をその信仰心が支える。
 バチバチと空気が鳴り、全身に針が刺さったような痛みとともに力がわき出る。
 これこそが最後にして最大の一撃。1度限りの壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。命をかけた大一番。

「二大神に奉る...ポイボス・カタス...」
「させん」

 しかしそれは簡単に防がれた。
 いや、放つことさえ許されなかった。

 突如出てきた刃が、腕を切り裂く。バランスを崩した身体が後方に倒れ込み、濁流のように押し寄せる強者共の走りがより激しく感じる。もう槍のストックが切れたか。もしくはもう槍を投げる必要性すらないと感じたか。

 最後の足掻きすらして貰えない。あんなに力を振り絞って。痛みに耐えて、神の加護すら受け取って。それでも。放つことさえ許されない。

「すまんな。こちらも正攻法に頼るわけには行かんのだ」

 そこに居たのは長い黒髪に黒色の装束を着用している青年、いやサーヴァントだった。彼はこちらにはもうなんの興味すらないと言い捨てるように視線を外し、何処から出てきたのか大きな馬に跨った。そして葵と紫式部の方に馬を走らせる。
 彼の真名はエウメネス。イスカンダルの秘書官である。

「やめろ...」

 ガラガラの掻き消えそうな声が怯える。両腕を切り落とされ、もう立ち上がることすら出来ない英雄など存在しない。そこにいるのはただ一人の女だ。
 そんなものに強者共は興味すらない。

「やめてくれ...」

 涙が漏れ出す目の端で男共が紫式部と葵に追いつくのが見える。何としてでも守りたかったはずのものが。捕まっている姿しか見えない。

 こんなはずじゃなかった。
 こんなはずじゃなかった。

 つい先程の英雄の誇りだのなんだの感じていた自分を殴りたい衝動に駆られると同時に腕がないことに気付く。

「ああ、あああ...」

 体力の尽きた二人が捕まる。
 これから起こることを否応なしに想像してしまう。
 それが何よりも防ぎたかったのにそれを止めることは出来ず。目をつぶることさえできない。二人は叫んでいるだろう。それすら男たちの方向で壊れた耳では上手く聞き取れない。

「やめろぉぉぉぉ
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