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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾-
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声は聞こえるが他の環境音、例えば他人の声や足音などは聞こえないのでこちらからは何も分からないがアタランテが感じたということは間違いではない。
「(方向と距離は?)」
「(マスターとは逆方向、距離は25m)」
アタランテから知らされた方向と距離に思わず驚いた。最悪、とすら言える場合だ。アタランテが気付く距離が近すぎる。25mなど、高い戦闘能力を持ったサーヴァントからすればゼロ距離と変わらない。そんな距離までアタランテに気付かずに近付けれるということはこちらに確実に気がついている上に手練だ。
この場合一番危険なのは囲まれること。アタランテが気付いた敵が陽動でアタランテを引き剥がすことで二人を囲む作戦の可能性も考えられる。
「(二人を守って退却。俺が後ろを取るから絶対に囲まれるな)」
なのでここはアタランテ達を囮にこちらが仕留めに行くのが最も成功率が高い。勿論、ここで自分が動くことを察して伏兵を置く可能性もあるが通る道が特定しにくい以上、罠に引っかからない可能性を考えたらかけてすらいない可能性の方が高い。
音を殺しながらも回り込むように走る。狙うは相手の後方。上手く行けば後ろから挟み撃ち。失敗しても奇襲はできる。相手に気付かれないようにすることを考えるとそれなりに時間はかかるがあちらには紫式部もいる。戦闘力は未知数ながらも葵もいるので危険度は高いながらも勝率は高い。
「(...いや、その必要は無さそうだ)」
するとアタランテが急に落ち着き出した。
その声に一応その場で止まる。敵を見て強くないと判断したのか、いや。後ろを取られているのは変わらない。なのにアタランテが余裕を崩すのはおかしい。何らかの魔術にかかって敵意を削がれたか。エインヘリアルには敵の感情を食らって自らの体にする化け物みたいな子供がいるがソレと似たような現象が起こっているのか。いや、アタランテの対魔力と紫式部の探知に引っ掛からずに手を出すことは難しい、というか不可能に近い。
「(何故だ?)」
「(彼女達が探していた傭兵だからだ。とりあえず )」
何故か聞くとアタランテが驚きの発言をした。
紫式部と葵の探していた傭兵。それが今まで生きていてこのタイミングで姿を現した。
最悪の予感が頭をよぎる。
だって冷静に考えてみれば妙だ。
敵地を視察するのが厳しいのは分かる。しかし情報が少ない時、1番警戒するのはなんだ。勿論、自分達の《《知らない》》攻撃だ。こうして陣地を構えている以上攻め込まれるのを想定するのは当然。罠を張る、監視をつけるなどやるべきことは沢山あるはずだ。しかしここはただの廃工場、罠や監視は未だに見つけられていない。
話は逸れるが防衛する側の時一番避けたいのは全滅だが、それに繋がりやすいものは何か。過剰戦
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