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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-拾-
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子を聞く。勝手に走って置いて行ってしまったのが少し罪悪感はあるがだからといって戻らない訳には行かない。

「(こちらには何もないぞ。マスター。そっちはどうだ?)」

 返って来たのはアタランテからの何事もない、という返答。念話での会話も盗聴されている可能性は低い。何よりアタランテがここまで敵に反応していないとなると敵が自分たちを見つけているかどうかはかなり怪しく感じる。一度撤退した時に逃げたと思っていまだに気付いていない、ということが考えられる。そうなるとこの子供は全くの無関係、もしくは前の所有者の物、という可能性も有り得る。実際、紫式部と葵の二人に攻撃した存在とこの子供をここにおいてこんな形にした犯人が同一犯だと言うことは証明できていない。ただもしこの子供をここに置いた犯人なら侵入者を許さないだろうということだけ。しかしそもそもその犯人がもう一人に負けて逃げるか殺されたりでもしていれば話は別だ。未だに工房を支配しきれていない傭兵か魔術師か不明だが何かがいる、ということで話は終わりだ。それなら楽...ではあるが現時点ではそう考えることが可能ということだけであり、違う可能性だって大いにある。

「(さっきと全く同じ死体っす。死体を使った魔術...って何かあるんすか?)」

 さっきと同じ、という点で子供が犠牲になったということは彼女もすぐわかるだろう。しかしそこはあえて触れずに話を振る。そこに囚われていては話にならないということもあるが、何よりアタランテの前にこれ以上子供の死体を想像させるのはあまり良くない。

「(死者を生き返らせたやつなら知ってるが今回は関係ないだろう。そいつが用いたのは蛇であって虫ではない)」

 彼女がいたアルゴノーツの船員の中にはアスクレピオスという死者を生き返らせる薬を作った英雄がいたが、彼とは無関係だろう。もし彼がここにいた生きたままの死体だなんて面白がって調べるところから始まるのだろう。彼女から聞いたことのある話だけで組み立てられたアスクレピオスの人格だがそこまで間違ってはいないはずだ。
 どちらにしろ、彼と今回の問題は無関係だ。アタランテが知らないというのなら紫式部に聞くしかない。それでも分からないのなら、仕方がない。相手に伏せられた手札があることを前提にして戦うしかない。先程戦った感触だけを考えるのなら不可能ではないはずだ。

「(おい、ちょっと待て。マスター)」

 そう思っているとアタランテの今までとは違う声色で声が聞こえる。先程までが軽かった、という訳では無いが急に人が変わったように重くなる。敵襲だろうか。それにしては、アタランテが動き出していない。一応念の為に拳銃をホルスターから引き出して周りを警戒する。

「(アタランテ?)」
「(誰か来た)」

 念話はその特性上相手の
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