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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-捌-
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れたサーヴァント達という戦力があること、そして彼らのマスターとなり、バックアップが出来るようになっていること、そしてそれを行った存在こそ人類の害、世界の敵とすら言われる人物であること。

「だから?戦えと?」

 しかし希望とは言えどそれは藁にもすがるようなもので確率的には無理と言えるほどに低い。そもそもその話自体、簡単に信じられるようなものでは無い。

「そこは自由意志を尊重する。先輩は戦いたくないって言うやつを戦わせるような人じゃない。こんな世界になってもいるのさ、底抜けの善人ってやつが」

 翔太郎はそう言って立ち上がる。
 その言葉が、まるで先程まで考えていた言葉の答えのような気がして、歯を食いしばる。
 何故か悔しく感じた。そんな希望論、信じていいものでは無いと悲観していたのは自分だ。

「馬鹿らしい。そんなので救えるわけが無い」

 だから、彼の言葉を否定した。
 いや、自分にはそれしかできなかった。それを終えてしまったら、もう彼の言葉に頷くしか無かったから。信じたかったものが、目の前にいたのだから。

「だから、手を貸す。俺は、戦う人間(マスター)だ。...お前はどうする?このままここに止まっていれば栄養失調で死ねるぞ。外に出れば魔獣が殺してくれる。それでも」
「それでも?」
「生きる意思はあるか。戦う意思じゃない。生きたいと思えるか。地獄を見ても、その身が消し炭になっても、生きたいと思うか。選べ」

 そう言って翔太郎は深澤の方を指さす。彼の演説のようなものはずっと続いていたらしい。
「失敗したな」と翔太郎は笑ってこちらを向く。その笑顔が、本当に年相応の少年に見えた。
─きっとこいつも大変な思いを沢山して、これからも沢山するのだろう。
─無駄死にすることだってあるかもしれない。これだけ強くても、サーヴァントに勝てても戦場ではまるで嘘のように死ぬことも珍しくない。
 それでも彼は覚悟を決めていたのだ。
 恥ずかしくなる。
 現実が厳しいから、悲観的になった。
 辛いことがあったから、当たる相手を探していた。

 けど目の前の人はずっと前を見ていたのだ。
 もう状況は同じ。なんならこちらの方が恵まれている。なのにこんな年下の子供に自分の道を選択する権利を与えてもらっていた。

「繰り返しになるが、諸君らは自由だ。何を選んでいもいい。どうしてもいい。我々に敵対するというのなら、それ相応の対応はとる。だから、自分の意思で選んで欲しい。後悔しないように」

 深澤の演説が終盤になっていた。
 自由。なんのしがらみもなく、自分の意思でなんでも出来る。しかしそれは外の状況と重ねて、という意味になる。
 外に出れば人を食い殺す魔獣。こちらを好き勝手使った男のようにサーヴァントで己の満
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