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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-捌-
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るように。正直に言って、普通なら自分たちはこの後もマトモな目には合わなかっただろう。崩壊前なら保護が基本だが、今の世界には保護する余裕はもちろん、無い。金銭的な意味は勿論、衣食住を提供できない。何しろ魔物に追われて自分の分だけでも至難の業なのだ。自分が得られないのに他人に提供することなど出来るはずもなく、殺す方が圧倒的に単純だ。
だが、深澤は頷いてこちらへと足を進める。
「いいも悪いもない。ただ、そうするべきだと思っている。他でもない、僕が」
その時にはこの言葉の意味がよく分からなかった。ただ、分かるのは深澤がこちらを助ける理由があるということだけ。
その様子に翔太郎が額に手を当てて、諦めるような顔をする。どうやらこの時のようなことは何度かあったのだろう。崩壊前はもちろん、崩壊後も。
「...セイバーをここに置いておきます。もしもの場合は彼女を頼ってください」
翔太郎はそう言って元に戻ろうとする。セイバー。その言い方からして彼もマスターだ。ということにはその時に気付いた。
やはりマスターは化け物みたいな強さを持っている、ということだろうか。深澤もサーヴァント相手に時間稼ぎが出来たことからそういう想像が頭をかすめる。
しかしそれを違うというようにベディヴィエールが手錠のようなものをかけられた男をどこかへ連れていく。男はいつの間に気絶させられており、強い化け物のようなものにはとても思えなかった。
それを見た翔太郎が牛若丸と戦った少年を連れていこうとした時、その翔太郎を深澤が制する。
「いや、翔太郎もここにいてくれ」
「それほどの敵が?」
「彼らはサーヴァントに恐怖を感じている。僕は彼らを恐怖で支配したい訳じゃない。話す時間は必要だろ?彼らにも、僕らにも」
深澤の言葉はあくまでこちらと話をしたい、という意味だ。その為に恐怖、力の象徴でもあるサーヴァントを遠ざけて人と人で話をしようと言っているのだ。
しかしそれも危なくなったらサーヴァントがいるという安心感とその安心感があることから生じる差を自覚し現れる愉悦感からのものだろう、と感じた自分からすればいいものでは無い。それは見下しているのと同義だからだ。勿論、これがひねくれた考えだという自覚は全くなかった。
「それじゃ変わりませんよ。憎しみは、そんなに簡単な感情じゃありません」
それを裏づけるように翔太郎が深澤に言う。翔太郎が言っているのは諦め。化け物になってサーヴァントに憎しみを抱いたこちらとは会話すら意味が無いということだ。
間違いではない。決して翔太郎の言うことは間違っていない。サーヴァントという人間では到底勝負にもならない兵器を個人が所有できる時点でこうなるのは当然だ。人間にとって憎しみや恨みはそんな単純明快に表せるものでは
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