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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-捌-
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、君はどうするんだ。まさかずっとそこで固まっているつもりかい?ここでの暮らしがいいなら僕を攻撃すればいい。ここでの暮らしが嫌なら相手を攻撃すればいい。ただそれだけだろう?」

 彼の言葉に唖然として開いた口が塞がらなくなった。しかし考えてみれば当然だ。彼はすぐにサーヴァントを召喚して人権を獲得した人間だ。化け物なんかと違って普通に生きて、普通に何かをする権利がある。むしろ、今までのしがらみを無視できる分、これまで以上に好き勝手に生きれる。だから相手の気持ちなんて理解出来ずにそんな綺麗事が吐けるのだ。と当時は考えていた為、悲観的になり、再び顔を伏せる。

「...意味ないだろ」
「何?」
「あんたらみたいに、俺にはサーヴァントなんていねぇし!好き勝手生きれるわけないんだよ!選ぶ権利なんて、弱者にあるわけねぇだろ!綺麗事並べるなよ!畜生!」

 男の言葉と態度が気に触ったのでその場で怒鳴る。自分たちに選ぶ権利なんてない。好きに生きる権利も、死に方を選ぶことすら出来ない。だから死ぬ。
 そんなの昔から当然だ。弱肉強食。弱者は強者の糧となり死ぬ。

 すると男は怒り返すのかと思ったらその姿を見てニヤリと小さく笑った。

─は?
 理解が出来ない、なんて次元の話では無い。理解することすら意味が無い。理解の領域どころか

 そう思った瞬間だった。深澤浩二の立っていた地面がひび割れて下から大量の牛若丸が湧き出てきた。元々泥から作られた牛若丸が泥に戻って下から地面を割り、その隙間から漏れ出るようにして大量に現れたのだ。無限に近い数を持ち、自らのホームグラウンドでのみ戦う牛若丸だからこそなし得た陽動からの奇襲だ。
 あまりの突き上げられた深澤の体が宙に浮く。人間の体では軽すぎる。間欠泉のように吹き出た泥によって紙風船のように吹き上がった体は原型を保っている方がおかしい。そう思いながら深澤を見た時に初めて気付いた。大量の牛若丸の塊の下に大きなルーン文字が敷かれている。間にシールドを敷いて対策をしていたのだ。今までずっとルーンを発動する時にその単語を言っていたがそれは全てこの時のための布石。

「勉強不足だな。ルーンに詠唱なんかいらないんだよ!」

 そこからノータイムで放たれる弾幕の嵐。それと同時に深澤浩二の手のひらに大きな魔術陣が現れる。なんのルーンが刻まれているか、なんてことは分からない。実際その場にいた時はルーン魔術どころかルーンの存在すら知らなかったので当然だが、その後も。最後まで教えてくれることは無かった彼の奥義。その効果なんて全く想像できない。
 その時に思ったのは直接マスターを狙ったのか、程度の話。そしてそれは相手のマスターも当然理解していたことなので即座に動き出した。その男が右腕を出すとそこから赤い光が放たれる。令呪。
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