第三部 1979年
原作キャラクター編
秘密の関係 マライ・ハイゼンベルク
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れるソ連や東欧の軍隊と違い、米軍を始めとしたNATO各国軍は、副操縦士でも射出座席の訓練を含めた搭乗員資格の所持を求められた。
もちろん、半年前まで後方勤務だったマライは、そんな資格は持っていなかった。
戦術機の仕組みや簡単な作動方法など、ほかの女性将校よりは知っている。
だが、訓練学校卒業ではなかったので、正式な搭乗員資格は持っていなかった。
「マライは、持ってないでしょう」
「じゃあ、乗せられないな」
「ええっ!」
「ベルンハルト君、君は自分の大切な人を危険な目にさらすのかい?
F‐14に乗りたければ、私と乗ればいいだろう。違うかね」
「じゃあ、俺の事、乗せてくれるんですね」
「いいとも!じゃあ、滑走路まで行こうか」
放っておかれたマライの元に、乳飲み子を抱えた一人の女性が声をかけてきた。
それはクゼ夫人で、彼女が抱えていたのは大尉の子息であった。
「素敵な彼ね」
「ありがとうございます。
貴女は?」
「クゼの妻です、どうぞお見知りおきを」
彼女は、右腕で抱えていた子息を側にいた知人に預けると、
「お声かけ、わざわざありがとうございます」
「ねえ、彼とはどういう関係になるの」
マライは、親切な日系人女性の質問に丁寧に答えた。
ユルゲンとのなれそめと、その関係を、仕事に差し障りのない範囲で、クゼ夫人に明らかにした。
「結婚してどれくらいになるの」
「実は、まだ独身で……」
「それじゃあ、駄目よ」
「どうして……」
「戦術機乗りでしょう、いつ何があってもおかしくないわ。
それに戦死した場合は、どうするの……。
残された未婚の母は、惨めよ」
すでに夫人から掛けられていた言葉で、泣きそうな顔をしたマライは、
「どうしても」と聞いた。
「そう、どうしてもよ。
シングルマザーと未亡人じゃ、世間の扱いは違うわ」
これはなにか、複雑な事情があるのかもしれない。
並んで立ったクゼ夫人は、それ以上の話はしなかった。
「思いっきり、泣いたらいいわ」
その言葉が終わらないうちに、マライは泣きじゃくり、困惑するクゼ夫人の胸に顔を埋めた。
夫人はマライの背中を優しくさすった。
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