第三部 1979年
原作キャラクター編
秘密の関係 マライ・ハイゼンベルク
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1979年7月14日。
さて、ユルゲンたちは、カリフォルニア州カーン郡にある海軍兵器センターに来ていた。
ロサンゼルスから、北に約270キロにあるモハーベ砂漠。
かつて、この一帯は支那湖と呼ばれる乾湖があった。
なぜ米国内の砂漠なのに、支那なのか、という疑問を抱く方もいよう。
それは19世紀末に清から渡った苦力とよばれる低賃金の筋肉労働者が、この場所で工業用の硼砂の採掘事業に携わったからである。
「支那人が集まって過ごした湖」という意味の「支那湖」は、これに由来する。
20世紀の半ばになるとこの一帯は軍用地としての開発が始まる。
海軍に、支那湖は買い上げられ、1942年以降、ここに海軍兵器試験所としてが建設された。
戦後は、ミサイルなどの航空兵器開発の一大拠点となり、海軍兵器センターに名前が改められた。
1992年にチャイナ・レイク海軍航空基地と名前が変更になり、今日に至っている。
東独軍の中尉であるマライ・ハイゼンベルクが、なぜ、米国のカリフォルニア州まで来ているのか。
それは、国費留学生としてコロンビア大学に入学したユルゲン・ベルンハルトのパ−トナーとして選ばれたためである。
ユルゲンは、米海軍の主催するF‐14の展示飛行に呼ばれており、その妻役として一緒にチャイナレイクまで来ていたのだ。
意気揚々としているユルゲンの脇にいたマライは、傍目に見ても陰々滅々とした状態であった。
それは、予期せぬ妊娠によるホルモンバランスの乱れによる軽い鬱症状であった。
マライにとっての当面の悩みは、不義の結果による、予想外の妊娠の事であった。
東独にいたころから月経不順で悩んでいた彼女は、経口避妊薬としても知られる低用量ピルを服用していた。
東ドイツでは日本より早く、1960年代には低用量ピルの処方が許可されていた為である。
ユルゲンとの関係は昨年から続いており、低用量ピルを服用していれば、他の避妊を併用しなくても大丈夫だと過信していた面もあった。
5月末に体調不良を訴えて、密かに私立の病院で内科を受診したときには、すでに妊娠12週を超えている状態であった。
どうするか思い悩んでいて、アイリスディーナの所にそれとなく電話を入れた時には、東独で認められている人工妊娠中絶の許可対象から外れた状態であった。
父と母の関係を見てきて、色恋沙汰を遠ざけてきたアイリスディーナは、色々と男女の事柄に疎かった。
ユルゲンに蝶よ花よと育てられ、昔気質のボルツ老人の方針もあってか、マライの話にショックを受けてしまった。
アイリスディーナは、ユルゲンの妻であるベアトリクスではなく、知人の木原マサキに連絡を入れた。
マサキは、アイリス
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