第六十五話 塔の空気その八
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「そこから離れられん、景色もな」
「ないな」
「そんな場所やとな」
「おってもな」
「ほんまな」
それこそというのだ。
「退屈なだけでな」
「何も意味ないな」
「そんな時間になるわ」
「それやとお金貰ってもな」
「あまりやな」
「やりたないな」
「実際そんな仕事やとな」
それならというのだ。
「多くの人がな」
「辞めてくな」
「そうなるわ」
実際にというのだ。
「嫌になってな」
「退屈過ぎて」
「時間が流れるのが遅くてな」
「そうなるな、それでも充実してたら」
「案外仕事もな」
「続くな」
「時間の流れも速くてな」
そう感じられてというのだ。
「やっていけるわ」
「この塔も同じやな」
「そや、充実してるな」
「僕等楽観的であってな」
「その二つが共にあるからな」
だからだというのだ。
「もう七割や」
「そう思うんやな」
「そや、あと僅か三割」
「そう思うんやな」
「それやと」
そうであるならというのだ。
「楽やな」
「その残り三割もな」
「そやからな」
だからだというのだ。
「このまま楽観的にや」
「充実しつつ」
「行こうな」
こう言うのだった。
そしてだ、神霊達の場所に来るとそこには福沢諭吉がいた、彼は陽気かつ気さくに笑いながら一行に言ってきた。
「ああ、よお来たな」
「あの、これから戦しますよね」
「それがどうしたんや?」
綾乃に気さくに応えた。
「娘さん、生憎わしは学生さんは相手にせんで」
「ナンパせえへんですか」
「わしは学生さんは相手にせえへん」
福沢もそれなりにそうした遊びをしていたということか、ただ学問だけに励む様な人物ではなく懐も深かったのだろうか。
「絶対にや」
「うち彼氏さんいませんけど」
「それでも学生さんは相手にせんわ」
笑顔で言うのだった。
「学問に体操に励む様に」
「そうですか」
「恋愛も遊びもいい、若人は青春を満喫するんや」
言葉は笑顔のままだった。
「ええな」
「ほな」
「噂以上に面白い人ね」
アレンカールは陽気で気さくな伊藤を見て述べた。
「飾らないし剽軽で」
「わしはこうや」
伊藤はそのアレンカールにもその態度で答えた。
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