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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-伍-
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そこまで危険ではない。

「悪いな。マスターを、怒らないでやって欲しい」

 もう念話を使う必要性が無くなった為実体化して姿を現す。それに習うように紫式部も実体化する。今回の場合下手に霊体化して数を隠すより実体化して葵を守ることに集中した方がいい。

「怒るって言うか...ちょっと驚きはしたけど」

 確かに知らない人目線で考えてみればちゃんと作戦考えて会議までして行ったのに始まってすぐにそれを放棄する、だなんてまるで料理を作っても食わずに捨てるようなものだ。意味不明、と判断されても仕方ないしそう思うのは当然のことだ。

「まぁ、マスターはああいうところがあるからな。...マスターは負い目があるんだよ。『この世界に化け物がいるのは俺たちのせいだ』と、よく言ってた」

 遠い日を見つめるように目を細める。仕方ない、と言えばその通りだ。あの場に今の真木がいても何も変わらなかっただろう。そもそも真木がどれだけ強かろうとあの戦いに参加していなかった以上本来なら真木が悔やむことではない。しかしそんな理論は真木にとっては関係ない。
 真木にとっては救える方法がありながらもそこで失敗した、というのは強い罪悪感を感じさせる。
 感じる必要のない感情で苦しめられるのは同じだ、と人類最強(とあるマスター)に言われたことを思い出す。感じる必要のない、と言うのは反論したが、確かに苦しめられているのは変わらない。簡単に言えば考えすぎなのだ。

「え?それってどういう...?」
「何、昔の話だ。マスターが来るまで少し昔話でもするか」

 驚く葵と紫式部の顔を見て少し気付く。そういえば真木には同年代の友人の大半が殺されているという過去がある。そんな彼にとって、彼女達は良い友人になれる関係だろう。となれば彼女達が彼のことを知っておくのは悪くは無いはずだ。周りに敵がいないかを確認して近くの機械に腰を下ろす。それに習って近くのものに葵と紫式部も腰を下ろす。

「私もマスターも実際に見た訳では無いのだがな。この世界がこうなってから3ヶ月後の事だ」

 彼女達も知っておいて損は無い話ではあるがこれは彼女たちに対してあまりいい印象を与えないだろう。最悪の場合、ここで全てを投げ出す、なんて可能性もある。だから出来るだけ言葉を選ぶ必要がある。

「この世界の元凶と交渉、もしくは撃退して世界を救おうとした男がいた。深澤浩二という男で彼は...そう。とある魔術師の、弟子だった。いや、弟子と言うより協力者というのが正しいか」

 深澤浩二。エインヘリアルの前身となる組織を作った、つまりこの日本にいる優れたマスター達をすぐさま手中に収めて、世界を救おうとした一人の男。未だにこの世界で人が化け物に対して対抗策を出せるのは彼の功績と言っても過言ではない。
 
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