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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-伍-
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「(了解...っと、アタランテ)」
「(ああ、血の匂いだ。距離からしてさっきの子じゃないな。確認するか?)」

 アタランテに確認を取ると予想通りの返答が帰ってきた。一応最初に潜入した時に子供の死体を見つけたがアタランテ曰く、それとは違うらしい。
 もしその死体が先程の子供と同じようか状態なら何らかの儀式の可能性も有り得る。自分はそこまで詳しい訳では無いが、死体をいくつか置くことで触媒とする...なんて儀式があるかもしれない。自分とアタランテは詳しくないが専門家などが見れば分かるかもしれない。
 その為東洋の魔術とも言える陰陽術に詳しい紫式部について来て欲しいがそこにあるのは死体の確率が高い。マスターである葵から離す訳にも行かないし、だからと言って葵も一緒について行く訳にはいかないだろう。

「(勿論。葵は...大丈夫っすか?)」
「(大丈夫)」

 しかし葵は肝の座った瞳でこちらを見ている。死体に見慣れている、とでも言いたいのだろうか。
 確かに彼女は覚悟が出来ている人間である以上、死体を見たこともあるかもしれない。原型が保っていない酷いものから死んでいるとは思えないほど綺麗な死体まで。だから大丈夫だと言うのは嘘ではないだろう。
 その時、胸の中に何かがグサリ、と音を立てて突き刺さるような感じがした。驚いて胸の位置を触るがしかし実際は何も突き刺さっていない。魔術による攻撃か、とも思ったがそれは違う。

「(祐介...?)」
「(無理しなくていいっすよ。かなりグロいっすから。様子だけ見てくるんで周囲の警戒だけお願いするっす)」
「待てっ、マスター!」

 不思議に見ている葵を置いてその場を走る。最初は何かが自分を尾を引くように重かった足が少し踏み出せば軽くなった。
 何故、こんな選択肢を取ったのかは分からない。普通に考えれば置いていった方が問題だろう。どうせ死体だ。出来ることなんて何も無い。ならば放っておくのが正しい。むしろここで離させること自体が敵の狙いという可能性もある。それでも、なにか理由のない感情だけで、自分の足は快調に動きだした。

◇◇◇

 真木(マスター)が走り出す。決して追いつけない背中ではない自分も走れば一秒とかからず抑えられる。しかし、彼の走る理由が分かっているからか、自分はその一歩を踏み込むことすら出来なかった。
 彼の背中が遠ざかっていく。どうせ二、三分で戻ってくるだろうが、まるでこれが永遠の別れのように見えた。
 彼の独断行動のせいで潜入作戦も全て水の泡、とまではいかないが崩壊した。まだ敵兵は見えないため見つかっているかどうかは不明だが、見つかりやすくなったことには変わりない。マスターなら、並大抵の相手でやられるようなことは無い。そのため、守ることを考えて動けばこちらも
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