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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-肆-
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か不幸かという話でいえば相手に自分たちの戦力的なパラメータを知られていないこともある。あの時、戦ったのは自分だけ。勿論、その時は伏せておいた切り札がいくつかある。これで侵入者の戦力を見誤って慢心してくれれば漬け込む隙はある。
「そうだね...それじゃ、早く行こう」
そう考えているうちに葵が立ち上がる。紫式部もそれに習って、彼女の後ろにつく。急いでいるのはわかるが、何やらその二人に違和感を感じているように思える。
二人の感じている違和感にも気にはなるがプライベートな可能性が高いので踏み込むことは出来ない。
「...ああ。臨時のパーティだが、悪くないと思うっすよ。それじゃ、とりあえず葵にこれをあげるっす」
懐からひとつのピアスを取り出す。真珠のような何かが着いた非常にシンプルな形状をしたもので目立ちにくい方であるとは思うがやはり機能性を求めたせいか、目立つものは目立つ。
「これは?」
「予備の魔術礼装っすよ。自分、銃器とか使うんで音が酷いじゃないっすか。そいつは目の前で発砲されても鼓膜にダメージを与えないようにセーブする魔術礼装っすよ。ほら、ピアスみたいに」
ゲーム等で銃器をほぼ完璧に再現しているものがあるがそれでも音までは再現出来ないだろう。普通、自分が撃つ場合も何らかの手段を用いなければ音は響いて鼓膜は破れる。魔術師達はその音を防ぐような魔術を使ったりすることも出来るが紫式部は年代的にその音に詳しいとは思えない。勿論サーヴァントである紫式部自身は無事だが、葵は無事ではないだろう。最悪の場合一生聴覚障害を抱えることになる。
このピアスはそれを防ぐ効果がある。詳しい話はよく分からないが音を閉じ込めて脳に情報として流すことでうるさいが耳は無事、というものらしい。そのため聞こえにくくなる、などの弊害は無い。
勿論銃器自体を魔術的な加工で音を無くす、サイレンサー(サプレッサー)のような働きをさせることも出来るが現地で銃器を調達する場合もある上に、そもそもサプレッサーを使っても自動車の走る音程の音は鳴るのでこうして耳の方を塞いだ方が簡単なのだ。
「えーっと、紫式部、頼まれても?」
とはいえ流石に男の自分が女の葵の至近距離に近づいてピアスをつけるだなんて事案にしか思えないので近くにいる紫式部に手渡しする。
その瞬間、パチッと音ともに軽い衝撃を感じた。冬場の静電気のようだが、それとは違う。何かが通ったのではなく、なにかに弾かれた。
それと共に彼女たちの感じていた違和感の正体に気がついた。最初は封じていると思っていた。しかしそれは違う。封じられていたのだ。
「ええ。勿論...祐介さま...?」
紫式部がこちらの顔を覗き込む。どうやら自分は冷や汗を書いているようだが、それに全く気がつい
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