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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-肆-
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女達には人を殺す覚悟があるのだろうか。

「葵様?」
「葵、君に無理強いをする気は無い。...する気は無いっす。やっぱり辞める、というのならその通りにするっすよ」

 葵の隣に腰を下ろして彼女の方を向く。今回の一件、もしかしたら人を殺すことになるかもしれない。その場合気になるのは彼女の倫理観と人が殺せるかどうかだ。人を殺せないというのは元の崩壊前の世界なら当然だが崩壊後の世界になるとあって欲しくないものと言われるまで強い印象がついた。それはこの世に命のやり取りがどうしても発生するからだ。しかし無理に人を殺す必要は無い。そもそも人を殺せる方がおかしいのは変わらない。エインヘリアルでは翔太郎など適応が早すぎる人間が多いが普通の人はそこまで早くない。まだ崩壊から半年だ。人を殺せるのを普通というのは気が重すぎる。現場で殺せないと言うよりはここでちゃんと引き際を考えて欲しい。
 しかし葵は違うと言うように首を横に振る。

「あ、いや。そういうのじゃなくて、ここまでちゃんと考えたのって初めてだったから。やっぱり、傭兵の人ってちゃんとしてるんだなって」
「君達はそこまで?」

 彼女が言うのはあくまでその作戦について。というより作戦について何か文句を言うわけでもなく、感心するように言っていた。
 確かに彼女がこのような場に触れる回数はそこまで多くないはずなのでこれが真新しく感じることもあるだろう。そもそも彼女は戦う人では無いのだから当然だ。
 しかしその反応には素直に驚いた。
 彼女がそんなことに気にするほど、迷いがないのだ。人を殺す可能性を考えていないのか、と思ったがそうでは無い。作戦を気にするということは現実を見ているということ。何より彼女の目が妙に座っている。現実を楽観的には捉えている目ではない。つまり覚悟が完了している。
 ありえない、という訳では無い。人間同盟や葛城財団のようなカルト組織が多い今日では元一般人が戦闘をして一種の境界を越えてしまうケースも多い。彼女もそのうちの一人だ、ということは聞かなくてもわかる。それでも、彼女はとても自然だ。自然に、その覚悟を見せている。
 それが少し、悲しかった。
 マスター達は覚悟、つまり戦闘や人殺しの成績を誇っているものが多い。自分のサーヴァントは強いから自分も強いだとか、自分を上に見るようになっていく。それは当たり前のことだ。こんな世界でもサーヴァントという強力な兵器を手札に加えられれば結果的に崩壊してよかった、だなんて思うこともあるだろう。崩壊前のしがらみから外れるもの。法律や倫理観で縛られていたもの。そんなものが解き放たれた瞬間、やることは大抵の場合欲望のままに動き出す暴走だ。その場合、大抵の人間では太刀打ち出来ないので自分たちが殺し≠ノ行く。エインヘリアルは元々研究機関とはいえ、
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