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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-壱-
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。誰もいない可能性は高い。物陰から覗き込む。そこには人の死体とそれに集るハエがいた。
「くっ...!」
人の死体を全く見てこなかった、という訳では無いがすぐになれるようなものでもない。もしなれなかったらこのまま吐いていたのかもしれないが今は気持ち悪い、と思う程度だ。
ほかの気配がないことを確認してグレネードを腰に戻して、拳銃を片手に死体に近づく。死体を集るハエは人が来たことに全く気付いていないようにその動きを止めることは無い。
「腹を食いちぎられてる...酷い」
死体の損傷はかなり激しい。頭は半分めり込んでおり、頂点の方から脳みそと思われる何かが抜けている。手足は傷だらけで蛆虫が這いつくばっている。腹なんてもっと酷い。なにかに牙を立てられたようにえぐれる皮膚と筋肉。臓器の大半と足りない皮膚と筋肉は近くに捨てられており、蛆虫とその卵が代わりに詰まっている。骨は突き出しているがそれは死体の変形によるもので蛆虫に食われただけでの露出では無いので恐らく死後1週間程度だろうか。
しかし何かが妙だ。乾いた血液、虫が這い回っている死体、血の匂い。
「死臭がしない?まさか」
そう。血の匂いで距離がわかるほどに血の匂いが濃い。それにしては遺体から出る血液量が少なく感じる。その上、死体が特にキツイ匂い、死臭がしないのだ。
人間の体内には、実は常日頃から微生物やバクテリアなどの細菌が潜んでる。生きている間は免疫作用によってこれらが増殖することはあまりないが、死亡して免疫作用がなくなると細菌は一気に増殖する。大体仕事二日か5日もあれば遺体は苦しくなるほど臭くなる。勿論そんな状態で細かく血の匂いを辿れるほど自分の嗅覚は鋭くない。
「やっぱり。保存されてる」
注意深く見てみると遺体の表面は腐っているように見えるが内部の方が腐っているようには見えない。わざと外見を腐っているように見せることで内部が保存されていることを隠しているのだ。
何故か。それは遺体の発見を遅らせるため、もしくはこれがなんの為なのか分からなくするため。もし後者の場合、この殺され方もなにか理由がある可能性が高い。
「どう思います?アタランテ」
そう何も無い場所に声をかけると何も無かったはずの場所に一人の女性が現れた。否、そこには何も無かった訳では無い。
いたのだが、見えなかったのだ。
霊視がないと見えない霊的な存在。亡霊やゴーストなど様々なオカルト的な文献で騒がれるそれと基本的には同じもの。ただ、その格と強さが羽虫と神ほど離れている、ということだけだ。
それもそのはずその亡霊はただの亡霊ではない。元々は過去や神話の英雄たち、英霊なのだから。サーヴァント、ゴーストライナーと呼ばれる彼らは通常時はこうして霊体となって活動している
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