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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
【視点転換】帰還の為の免罪符-壱-
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世界の崩壊。それは魑魅魍魎が大波が流れてくるように大量に押し寄せる世界の終わり。災害にすら耐えてきた人の文明は簡単に消されていった。まるで波が砂浜に描いた絵を消していくように。

 文明のレベルがおかしくなったという時にせっせと仕事場に来て働く者などいやしない。そのおかげか、廃工場には世捨て人、犯罪者のアジトとなっていった。もちろん、変なものも住み着いているが。

 手入れのされていない錆び付いた階段と手摺の強度を確認しながら進んでいく。
 時折ギィー、と限界のような音がする。壊れてないのはこちらの運がいいのか。人のいる気配を辿り、雨漏りする天井を見上げる。天井には何かが突き刺さっていて、その隙間から雨が漏れているのだ。これだけ水を被れば短時間で錆だらけになる。ここにいては体の芯まで錆び付いてしまうとつけていたネックオーマーを鼻の辺りまで吊り上げた。

 生命力の強い雑草が割れたコンクリートの隙間から上へ上へと伸びていく。穴の空いた天井から指す陽の光が雑草を照らす。人の文明がほとんど消されてもこうして生きている命はあるのだ、と思いながらその雑草を跨いで先に進む。
 廃工場とはいえ最近まで使用されていたというのに荒れ方が酷い。しかし、自分が見てきた中ではまだこの荒れ方はマシだと思えた。
 そこまで歩くと鉄と錆の匂いに混じって最近になってようやく嗅ぎ慣れてきた匂いを感じる。
 血の匂いだ。それもまだ新しい。そしてかなり近い。血の匂いは鉄のサビの臭いに近いため近くまで来ないと気付かない場合が多い。今回もそれだ。

「近いな」

 水溜まりを跨いで小走りでその場所に急ぐ。そして急ぎながらも腰から一丁の拳銃を引き出す。黒光りした基本的な形をした自動拳銃。名前をグロック17という。口径は9mmの装弾数17+1。基本的な拳銃といえばこれを思いつく人は多いだろう。実際、多くの国で軍用、そして警察用の拳銃として扱われている。だがこれはオリジナルのものとは少々違う点がある。
 
 血の匂いのする場所が目と鼻の先とまで言えるところまで来たら物陰に隠れる。血がある、とは言ってもちょっと擦りむいたり、切った程度の血なら余程の至近距離にならないと分からない。つまり大量の血、人一人が出血死するレベルの血の量がそこにある。つまり、この場所には人ではない何かが住み着いている可能性がある。彼らは基本的に人の敵だ。理由もなく、人を食らう彼らはモンスターだとかエネミーだとか魔物だとか言われるがなんであれ人型だったり怪物だったりする、生き物であるかも疑わしい何かがいる。

 腰に引っ付いたグレネードを拳銃を持っていない方の片手に持つ。親指を安全ピンに引っ掛けて投げた時に自動的に安全ピンが外れる位置に調整する。
 血の匂いのする場所に音はない。ほかの気配も感じない
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