第六十五話 塔の空気その一
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第六十五話 塔の空気
塔を登りつつだ、中里はふと気付いた様になって言った。
「ずっと温度も空気も変わらへんな」
「塔の中のやな」
「ああ、もう相当進んでな」
シェリルにそうしていてと話した。
「地下世界からな」
「もう地上に出てるな」
それこそというのだ。
「そうなってるな」
「そやな、しかしな」
中里はそれでもと話した。
「気温はずっと同じや」
「基本的にな」
「寒冷地とか氷の階は冷えていてな」
そうした環境でというのだ。
「熱帯や砂漠やとな」
「暑いな」
「そやけど基本はな」
多くの階はというのだ。
「二十度位でな」
「一定してるな」
「それで空気の濃度もな」
これもというのだ。
「基本な」
「変わらへんな」
「それを見るとな」
シェリルに今の階を一行の先頭を進みつつ話した、今の階はごく普通の煉瓦の迷宮型の階である。よくある形式の階である。
「ここはやっぱり特別な場所やな」
「空気の濃度を観ても」
「高くなるとな」
そうなると、というのだ。
「どうしてもな」
「空気が薄くなるな」
「もう何千メートルになるとな」
「空気が相当薄くなってな」
「おるだけでや」
ただそれだけでというのだ。
「かなりや」
「しんどくなるな」
「そうなるけどな」
それがというのだ。
「ないからな」
「空気、酸素の濃度が変わらへんから」
「この塔がな」
「独特やってわかるな」
「ああ、ほんまな」
「先に進んできてわかったな」
シェリルは中里に神妙な顔で応えた。
「そのことが」
「本にも書いてあったけどな」
「この塔の気温は基本一定していて」
「二十度位で」
「そして空気は変わらん」
酸素等の濃度はというのだ。
「それでそうしたところは安心してな」
「先に進めるな」
「有り難いことにな」
「空気が薄くなるとな」
芥川も言ってきた。
「ほんましんどいからな」
「それだけでやな」
「人が満足に動くことはな」
酸素濃度が低い中でだ。
「相当にや」
「重要やな」
「ああ、そう考えたらな」
「この塔のそうした環境はやな」
「有り難いわ、ここは神霊さん達の領域やさかい」
そうであるからだというのだ。
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