40:届かなかった手
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嫌悪。
冷笑。
そして嗜虐したことによる、ある種の快感。
それら全てが織り交じった、ボクを冷酷に見下ろす、嘲りの微笑みを。
最後にボクを鼻で笑い、今度こそこちらに背を向けて姿を消す、その無慈悲さを。
そしてこの場には、ボクだけが取り残され……回廊が音も無く消滅した。
「…………………」
それを見せ付けられても、ボクは声も上げれず、どんな顔をすればいいか分からないまま……
腰が抜けたように動かなくなった足を引きずり、手で地を掴みながら、ルビーが散った場所へと体を運んだ。
つい先程まで山ほどアイテムがあったその場所には、売れ残りのように、たった二つの物が残されていた。
一つは、まるで汚物の如く忌み嫌われてその場に放置された……一振りの、黒い《大鎌》だった。
そしてもう一つは……土埃を被ってしまった、一本のねじれた――白銀の小さな角だった。
「あ、あ……」
ボクはその角を拾い、指先で土を払う。すると、その角は僅かに青く発光しているようだった。
それを指先でタップしてみる。
《ルビーの心》。
そう表示された、恐らく主人以外は拾得不可だったのであろうアイテムの表記を、じっと見つめる。
それは、使い魔が……死んだという《宣告》だった。
「…………あっ、ああぁっ……」
今になって、ボクは声を喘がせる。
体が震え、嗚咽にも似た勢いで、悲しみが胸から喉へとせりあがって来た。
「――――あ、あぁっ……ぁあああっ、あ、ぁあぁあああぁぁああああっ…………!!」
そして、ボクはようやく自覚する。
――ボクの大切な友達が、出会ってたった一日で、目の前で殺された事を。
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