40:届かなかった手
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を。
それと同時に鳴り響く、幾重にも重ねられて大音響になった、プレイヤー達のレベルアップのファンファーレを。
「―――――――――――――」
息が、出来なかった。
何が起きたのか、頭で理解できなかった。
ドサ、両足が力なくその場で崩れ落ちた。
……そして巻き起こったのは、
――ワァァァァアアアッ!!
という、パーティ員達の、晴れやかな歓声だった。
まるで、最前線のボスモンスターが撃破された時の、攻略組の人達のような喝采だった。
あるものは高らかに笑いあい、あるものは互いに肩を組んで健闘を称えあっている。
ボクを取り囲んでいたプレイヤー達も、それぞれガッツポーズを決めた後、笑い声を上げながら前方の集団に戻っていった。
……その数秒後、ルビーが散ったその場所に、種類問わずのレアアイテムの山がゴロゴロと湧出するかのようにドロップした。
すると彼らは一斉に目の色を変え……全員が我先にその山に顔から突っ込んだ。
まるで、餌を与えられて食欲のままに群がる、養豚場の豚達を見ているようだった。
とても、滑稽な光景だった。
そんな彼らに……ルビーの清らかさを、汚されているようだった。
怒りは……不思議と沸いてこなかった。
それすら……今のボクには考えられなかったから。
「――…………なんで……?」
ボクはポツリと呟いた。
その声は……ボクに背を向けている彼らには届かなかった。宝の山に顔から突っ込んで貪っては奇声を上げ、中には罵倒の怒声を吐いてアイテムを奪い合っている輩もいる。
ただ、ボクはその場で、その光景を眺めることしかできなかった。
……そして数分後。
リーダーが、ドロップ品の中にあったらしい《回廊結晶》を、豪勢なことに躊躇いも無く使い、回廊を召喚した。
するとパーティ員たちは未だ愉快気に笑い声を上げながら、続々と回廊へ足を運び、どこかへと転移していっていた。
彼らはボクを一瞥する事も無く、次々に姿を消していく。
そして……その残り人数が数人となったとき、
「なんでっ……?」
と、動かない喉からようやく、先程よりもほんの少しだけ大きい声を出すことが出来た。
その声は彼らに届き……回廊を目前としていた残り数人が全員、こちらを振り向いた。
「―――――――」
そしてボクは二度目の、頭が真っ白になる衝撃を味わされた。
……ボクはきっと、その顔を忘れられないであろう。
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揃って浮かべた、その見下ろす表情。
それこそ、豚を見るかのような……
悪意。
嫉妬。
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