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不可能男との約束
刃の始まり
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ら───お前の奥さんが俺達と同じ立場になっても、その台詞を言うのかよ?」

「……ッ」

痛い所を突かれた。
立花・宗茂を知っているのならば、自分には立花・ァという妻がいることくらいは総長連合や生徒会の一員ならば誰でも知っている事だろう。
そしてその答えは内心では決まっている。
だから、自分は偽善だったのだ。

「そうだと言うなら、人間としては正しいぜ? 自分の命が大事? 結構だ。自己犠牲だなんて下らない事を言うよりは何百倍もマシだ。周りを巻き込むのは悪い事? 一概にそうだとは言えないが、そういう事もあるだろうな。だから、人間としては正しい───ただ男としては最低だけどな」

「───違う!」

見捨てれるはずがない。失くすつもりなんて一片も存在しない。彼女を失うくらいなら、世界なんぞどうだっていいし、打倒するくらいの気概は持っていると確信して言える。
彼女を守りたいと願って鍛えた武芸を、そんな事で迷ってしまうなどとは言えない。
だからこそ、自分は表情を歪めたのだと思う。
自分は武蔵の行動に対して、何かを言えるような立場ではないのだと。

「なら、キャンキャン吠えるなよ。自分に出来ねーことを他人に押し付けんなよ。はっきり言って迷惑だぜ」

「……」

「で、だ。長々と語っちまったが、どうすんだ? ヤんのか? ヤんねえのか?」

迷った。
本当に迷った。
自分のもしかしたら一%にも満たないかもしれないが、あったかもしれない可能性の武蔵を否定(たたかって)もいいのかと。
だけど

「───戦います」

自身の大罪武装を構え直す。
構えは基本の正眼の構えを少し、崩し深くしたもの。悲嘆の怠惰は大剣にカテゴリされるため、普通の剣みたいにまともに構えるには骨が折れるのである。
故に構えるのは何時もこうである。
力を入れ過ぎず、かといって入れていないというわけではなく、そして何時でも自分の瞬発力を発揮できるようにした構え。
そこまで思い、ふと気づいた。
そういえば先程の一撃で、彼の剣を覆っていた布は斬り千切られた。
ならば、どんな剣なのかが解る。戦う相手の剣がどういうのかが解れば、やり易いし、見て理解できるとは思えないが、名有りの剣ならば能力が推測できるかもしれないからだ。
そして見た瞬間───唖然とした。
その剣の銘を理解した───からではない。
全く理解できなかった───からではない。
ただ、見覚えがあったから愕然としたのだ。
知っている。そのフォルムを。だが、その全部が全部似ているというわけではなかった。
どこか生物的な形をしているのは、自分の知っている通りであった。だが、そこに少しばかり機械的な物をつけられており、まるで機械と生物を合体させたかのような奇妙なアンバランスな大剣。
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