刃の始まり
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…」
不覚にも見とれてしまった。
彼はブースターで空を駆け上がってきている。
故に、彼の背後は流体光の軌跡が残っており、まるで空への階段を上ってきているような錯覚を覚えてしまった。
だから、彼がそのまま宗茂を追い抜いてしまったのを見逃してしまったのもある意味仕方がない事。
そして彼はそのまま自分の上を取って、剣を叩きつけたのを躱せられなかった事も当然であった。
その光景を全員が沈黙して見ていた。
誰かは驚きを。
誰かは喜びを。
誰かは信じられないという呟きを。
だが、最後には武蔵の最大の喜びの叫びとK.P.A.Italiaと三征西班牙からは悔しさの呻きが響いた。
その光景を、一人、終始笑顔のまま見ていたトーリは勝利した自分の親友を見て、ただ一言呟いた。
「さっすが、俺の親友。頼りになるぜ」
その顔には何時もの笑顔と共に、何か誇らしげなものを自慢するような感情も込められていた。
「さて、と……」
熱田は勝利した後、立花・宗茂が使っている悲嘆の怠惰を奪って、そのまま本陣の方に走ろうとしていた。
立花・宗茂は空中から落ちた場所で横たわっている。
最後の一撃は刃ではなく、峰で叩いたのでどちらかというと打撲になっているが、それ以外は足以外重傷はないようだし、血も出ていないようなのでほっとくことにした。
脚はどうなるか解らないが、リハビリをすればもしかしたら治るかもしれないという楽観視をするしかなかった。
流石にそこまで診断をする事は素人である自分には出来ない事だし、剣神の影響故に治療術式も使えない。
だから、宗茂の根気を信じるしかないのである。
それに余り、ここにいると彼の嫁が来るかもしれないし、トーリの馬鹿の方もどうせまだ問題だらけだろうし、どうにかしてやらなきゃいけないだろう。
頼れる親友っていうポジションも大変なもんだと溜息を吐きながら森を出ようとしたところ
「……止めを、刺さないんですか?」
そんな声が聞こえた。
自分達の会話が聞かれているかどうかを確認しながら振り向かずに答える。
「残念ながら……どっかの馬鹿との約束の一つでね。出来る限り傷つけず、そして殺さないというので殺しは無しの方向なんだよ」
「……貴方はずっと十年間、何もしない彼をよく信じれましたね……」
「まさか」
そんなわけがない。
何もしていなかったのならば、それを信じられるはずがない。トーリが何もしていなかったら、俺は十年間も律義に待つはずがない。
では、何故? と当然の疑問が返されたので、他の連中には聞かれていない様子だったので俺はそれに正直に答えた。
「だって、あの馬鹿───相変わらず馬鹿だったんだぜ?」
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