刃の始まり
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瞬間、彼が柄にあるスイッチを押したら巨大な刃の峰の方が開いた。
そしてそこから何か漏れる輝きがあった。
「流体光ですか……?」
何をする気だと思っていたら───その流体光が爆発した。
比喩である。
ただ、その漏れていた流体光が目に見えて大きくなり、そのまま加速するためのブースターになっただけなのだから。
唐突な爆発的な加速に自身の速度が打ち負けた。
初めての敗北であった。
勝敗としてではなく、加速としての。今まで一度たりとも、その分野だけで言うならば、本多・忠勝にも、本多・二代にも負けなかった速度での勝敗。
大きく見れば負けではないのかもしれないが、これは敗北だ。
何せ今度は力ではなく、加速によって自分は弾かれたのだから。
「……!」
漏れそうになる苦痛と悔しさを唇から血が出るくらい強く噛む事で抑える。
まだだ。まだ自分は負けていない。
自分は今、空中で地面に頭を向けて、無重力状態みたいに浮いているが、それは弾かれた時の加速により浮いているだけ、直にそのまま落ちる。
今迄みたいに空中での姿勢制御も、ここまでになったら治しようがない。
そして、敵である剣神は既に着地して、こちらを見ている。
あの体勢ならば、そのままこちらに足を向けて、斬るのに何の支障もないし、いざという時は彼が言うには第一形態がある。
なら、こちらを斬るのにミスをするなど剣神がするはずがない。
負けるのか? 負けていいのか? ここで自分が負けたらどうなる?
いや、そもそも負けていい勝負などない。負ければすべて終わりとまでは言わないし、敗北が時には経験になるという事も理解している。
だからと言って、負けていい理由にはならない。
そうだ。自分には帰る所に待ってくれる人がいる。故に敗北なんて認められない、許さない。
故に───ここで両足を断ち切る。
「あぁ……!」
咆哮というよりは叫び声をあげて、大気を蹴った。
大気というのは何も触れるはずがないと誰もが思うが、それは間違った答えだ。
大気には窒素もあるし、酸素もある。目に見えないレベルでの塵やごみがあるし、埃もある。
それらにも抵抗というのもある。
だが、無論それらを足場として使うのならば、今よりも倍以上の加速を行わなければ足場として成り立つはずがない。
そして、立花・宗茂が使っている加速術式は神道の禊を利用した加速術とは違って、術者への負担を取り除いてくれない。
代わりに、神道の物よりもスピードだけならば、圧倒するのだが。
だからこそ、両足から破壊の断裂と粉砕が起きた音と痛みが発生したのは当たり前の結果。
だが、その代償として彼は頭を下に、しかし地平を水平に飛んで加速するという偉業と言ってもいいレベルの動きを作った。
正しく神業。
故に、ただの
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