刃の始まり
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で、前髪で目から鼻まで隠れていたのだが、表情は口を見ただけで理解できた。
笑っていた。
心底快いと、心底面白いと、心底愉快だと笑っていた。
その気持ちは、さっきまで表示枠を見て、武蔵の総長の言葉を聞いていたから男として、侍として理解できる。
そして、自分が顔を俯かせていたことに気付いたのか、笑みの形を少し変え、私と向かい合った。
「よう、お互い大変だな。いきなり戦争の勝敗を握る立ち位置に勝手にされて。お前の場合は、まぁ、結構期待されてのことらしいが、俺の場合は馬鹿の勝手な判断だからなぁ……勝手しやがって全く」
「……よく言いますよ」
明らかにさっきから戦る気満々であるのは、向かい合って気さくに接しながらも剣気を引っ込めていない事から丸わかりである。
しかし、だからと言って、それに付き合う義理はない。
出来れば、自分はこの提案を言うためにこの場に来たのである。
「非礼を承知で言わせてもらいます───降伏してください」
「……あん?」
睨まれることは承知の上での提案である。
だからこそ、構わずに続けた。
「はっきり言わせてもらいましょう。仮にですが、もしもこの場で貴方たちの姫を奪還して、勝利を得ても、このままでは武蔵は孤立してしまいます」
「……」
一応続けろというような視線を受けたので、そのまま続ける。
「そうなってしまえば、どうりますか? 武蔵は世界から弾き飛ばされ、敵として今後扱われることになるのです。針の筵という言葉を体現するような状況になってしまうのです」
そうなってしまえば
「貴方たちはどうなってしまいます? 少なくとも今日まで過ごしてきた平和な毎日は失われるのです」
それがどういう事だというのか
「解らないというような子供ではないでしょう。代わり映えのない毎日と言えば退屈と思われるかもしれませんが」
それのどこがいけない事でしょうか
「少なくとも姫を諦めてしまえば、まだ間に合います。その後は私が出来る限りの助力を申し出ます」
嘘ではない
「昨日までと同じとまではいかないとは思いますが、それでもここで貴方達が堪えてくれれば、まだ間に合うはずです」
ですから
「どうか、降参してください」
そして私は目礼をした。
解っている。
自分がしている事は筋金入りの偽善者が吐くような台詞である。対岸の火事を見て、可哀想だなと思う人と自分がしている事は何も変わらない。
自分達が当事者ではないから、こう言っているだけなのだと解っている。
それでも、だからと言って、目の前で自暴自棄な事をしようとしている武蔵を見て、見捨てる様な行いはしたくないのである。
そして、果たして通じたのか。
「……んー?」
彼はまるで困
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