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リュカ伝の外伝
好青年
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「あ、少しだけですけど……僕のお祖父様が……」

リュカさんもウルフ宰相も、こういう所で名前を利用される事を凄く嫌う。
この方(父親の方)もこの会場に来てるって事は、グランバニアの企業なのだろう。
今後の為に変な蟠りは残さない方が無難だ。

「ふ、ふ〜ん……ウルフ宰相閣下と縁故があるってだけで、こんな程度の絵が世界の人々の目に入るなんて……君はラッキーだねぇ。羨ましいよ……私もウルフ宰相閣下と知己を得ていれば、今頃は私の絵こそが会場中を埋め尽くしていただろうね!」

確かに、会場内では端の方だし、まだまだ大々的に世間に発表する程の絵ではないが、言い方にトゲがあってイラッとする。
とは言え彼等が誰なのかは分かってないし、下手に不興を買って後日お義父さんの邪魔にもなりたくないし、今はこの場を早々に離れて穏便に済ませよう。

僕は妻に視線を向けて立ち去ろうと無言で合図を送った……
だが妻は視線を会場の奥に向けて伏し目がちに言う。
「アナタ……手遅れでしたわ」

言われて僕も視線を向ける。
そこには……
「やぁアンディー! 今夜は来ないって聞いてたのに、何忍び込んでるんだよ(笑)」

見つかってしまった……いや、来てしまった!
「も、申し訳ありません陛下。ここに息子の絵が飾られてると聞いて、勝手に来てしまいました。ですが本日はこれで失礼させて頂く予定です」

「へ〜……これ、ルディーの絵なの?」
「あ、はい。ウルフ閣下が褒めてくれまして……飾ってもらえる事になりました」
息子はリュカさんに物怖じする事無く事の経緯を簡潔に説明する。

「うん、聞いてる。『まだまだ荒削りだけど将来有望な画家の絵だから飾りたい』って言ってた。僕も観たけど、悪くないと思ったから許可した。まぁ僕は美術眼が全然無いけどね……そこの青年が大声で言ってたし!」
そう言ってザルツ青年を指差す。

「い、いえ陛下! 私は陛下の事は……」
「僕、性格悪いからさぁ……自分に向けられた悪口って忘れないんだよね。先刻(さっき)君言ってたよね『ウルフ宰相閣下と縁故があるってだけで、こんな程度の絵が世界の人々の目に入るなんて……君はラッキーだねぇ』って! それって僕は良いなぁと思ったこの絵が、世の中的には低価値って事だよね! 僕の美術眼がドン底って事だよねぇ!?」

「そ、そういうことでは……」
「じゃぁ何でこの絵を貶したの? この国の王様で、この城の主が気に入って飾ってるであろう絵を……何で貶したの!?」

「そ、その……私も絵を描いてるのですが……羨ましくて、悔しくて……」
「じゃぁ他者の絵を貶す事でお前の絵が評価されるの? お前は他人の絵を貶す事で、自分の絵の技術が向上するの?」

「いえ……されません」
「じゃぁさぁ……
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