第九話 山が多い国その十
[8]前話 [2]次話
「一体」
「その時はか」
「そうですよ、大変ですよ」
「その時はその時だ」
ここでも慌てない桃井だった。
「奪い返すか対抗する手段を考えることだ」
「ドクターマンの知恵や知識にですか」
「そうだ」
まさにというのだ。
「それだけだ」
「そうですか」
「連中が先に見付けてもだ」
その場合もというのだ。
「見付ける時は見付けてな」
「見付けない時はですか」
「見付けないということでな」
そうした考えでというのだ。
「特にな」
「慌てないんですね」
「焦らない」
「そうか、だから今はか」
犬塚も桃井に言った。
「休憩時間だからか」
「動かない」
そうだというのだ。
「しっかりと休む」
「休む間はないとか言わないな」
「ずっと働いていては疲れてだ」
桃井は犬塚にも堂々とかつ毅然として話した。
「仕事の効率が落ちるからな」
「だから休む時は休むか」
「仕事の時もそうしている」
配達のその時もというのだ。
「働く時は働いてだ」
「休む時は休んでいるか」
「食う時は食っている」
桃井はこうも言った。
「そうしている」
「成程な」
「それで休憩時間が終わればだ」
「店を出てか」
「ドクターマンを探すぞ」
そうするというのだ。
「いいな」
「それじゃあな」
「あの、それで今日は何処を探すんですか?」
桃谷は右手を挙げて桃井に尋ねた。
「それで」
「今日か、足立区だ」
「あちらですか」
「あちらに行ってだ」
そうしてというのだ。
「探すぞ」
「そうしますね」
「そして明日は田園調布だ」
そちらに行くというのだ。
「あちらに行くぞ」
「そうして探しますね」
「そうする、それでだが」
桃井は今度は自分が注文した生クリームが入ったソーダを飲みつつそのうえでこんなことを言った。
「今日のソーダは美味いな」
「いつも以上にか」
「以前よりさらに美味くなった」
そうなったというのだ。
「実にいい、作り方を変えたか」
「食材は同じだ」
マスターの黒い五色田は無表情で答えた。
「全くな」
「それではだな」
「言う通りだ、これまでとはだ」
「作り方を変えたな」
「メニュー自体のな」
「それで以前より美味くなったな」
「その通りだ、よくわかったな」
桃井を褒めもした。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ