激闘編
第八十三話 鳴動
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帝国暦486年5月6日14:00
フェザーン星系、惑星フェザーン、フェザーン自治領、自治領主府、
アドリアン・ルビンスキー
目の前には補佐官のボルテックが神妙な面持ちで立っている。
「閣下、少しばかり重要なご報告がございます」
「何かな」
「帝国に対する貸付残高…国債でございますが、ニ十兆帝国マルクを越えました。また新たな国債の買い付けの打診がありました」
「ニ十兆…中々穏やかな額ではないな」
「はい。そのうち償還期限を越えた物が二兆帝国マルクに達します」
「返済期限の過ぎた借金があるのに更に借金の申し込みか。返してから申し込むのが筋だろう。償還要請はしているのかな」
「全額はとても無理でしょう、利息の支払いだけで手一杯の様です。それについても期限延長の打診がありました」
「まあそうだろうな。報告は以上かな?」
「いえ。続いて同盟ですが、彼等の言う新領土及び解放宙域の開発が順調の様です。帝国とはうって変わって、我々に対する国債の償還を再開しました。まあ再開したと申しましても償還期限の過ぎた国債の償還で、額も僅かずつではありますが…償還期限の過ぎた国債の総額は約三千五百億ディナール、国債総額では七兆五千億ディナールに達します」
「どちらも借金してまで戦争をしておるだから始末に悪い。相手の事など気にせず国家運営に専念すればよいものを」
「両国としてはそうもいかぬのでしょう。今や不倶戴天の敵同士でございます」
「人類全てが同じ政治体制でなければならぬ訳ではないだろう。他者への寛容を忘れた結果だな…まあそうであるからこそ我等の計画も進む訳だが」
「仰る通りでございます」
「帝国に対しては国債の償還期限延長に応じてやれ。新たな国債の買い付けに引き受けてもよいと伝えるのだ」
「よろしいのですか」
「構わん。それより同盟の方が気になる」
「借金を返済する余裕がある…財政が健全化している結果でございますからな」
「そうだ。同盟の方が人口は少ないが、その分社会インフラの成熟度は高い。財政さえまともなら簡単に生産性を上げる事が出来るのだ。それに対し帝国は貴族領として地方自治を貴族どもに任せている。その分国全体には統一性がなく画一的な社会インフラという面では同盟より劣っている。言わば帝国は帝国政府と貴族領の連合王国のような物だ。全体では同盟を上回るが、ほとんどの貴族達は何ら帝国に貢献していない。国の運営も同盟との戦争も、帝国政府だけが行っている様な有様なのだから帝国の為政者達も頭が痛い事だろうな」
「はい。ですが、なればこそ我等は深く食い込む事が出来ます」
「うむ。それでだ、同盟が優勢な今、両国同時に勢力を浸透させるよりは帝国に力を入れた方がよいと思うが、補佐官はどう思うかな」
「閣下がそうお考えであれば、私には異存はございま
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