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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十三話 鳴動
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ならん」
やはりな、この無意味な言葉の応酬から始まる時はろくでもない事がある場合だ。
「この無能者の力を借りねばならん事態とは…難事かな」
「そう皮肉を申されるな長官…近日中にとある政府閣僚が退任なされる。リヒテンラーデ公が…その際何事か起きるやも知れぬ、軍の力を借りねばならぬかも知れぬと仰られてな」
「…反乱が起きる、と?」
「その可能性が高い、という事よ。一個艦隊、いや二個は必要かも知れぬ。それと擲弾兵も必要じゃろう」
「擲弾兵…オフレッサーには伝えてあるのか」
「いや、まだだ。まだ訳知りは少ない方が良いと思うての。本部長、惑星制圧には二個師団も居ればよいだろうか」
「そうですな…惑星全土ではなく一部の都市機能の制圧のみなら二個あれば充分でしょう。どうですかな、長官」
「本部長と同意見だ。都市を制圧して反乱の首魁を捕らえるだけなら、二個あれば充分だろう。いつ出撃させればよいのだ?」
「待て待て、反乱が起きたら、の話じゃ」
「艦隊級演習として出撃させればよいと思うが。本部長、命令書の用意を頼む。オフレッサーには私から伝えよう」
「了解した…尚書、それで宜しいかな」
「構わん…いや、出動待機命令に変えてくれ。では二人ともご苦労だった」

 公室を出ると、統帥本部長が歩み寄って来た。
「カストロプ公だよ。リヒテンラーデ公に退任を勧告されたらしい。拒否する場合は陛下の勅を頂いた上で立件して逮捕に踏み切るという事だ」
やはりあの男か…。今まで退任させられないのが不思議なくらいだったが…。
「よく知っているな」
「なあに、統帥本部には口さがないのがたくさん居るからな。卿の所でもそろそろ騒ぎ出す奴が出てくるだろうよ。儂も知ったのは一昨日だ」
カストロプ公はブラウンシュヴァイク一門やリッテンハイム一門とも等しく距離を置いている、両派閥と利害調整をせずに済むのはありがたい事だ。誰を討伐に向かわせるかだが…。



5月17日14:00
オーディン、ミュッケンベルガー元帥府、ミューゼル艦隊司令部事務室、
ラインハルト・フォン・ミューゼル

 「カストロプ公が反乱を起こすと仰るのですか」
「可能性の話だ、ミュラー。国務尚書から退任勧告されるとなれば、体のいい罷免だからな」
「今まで蓄財に励んでおられた方が辞職を勧告されたからといって、金のかかる反乱など起こすとは思えないのですが…」
「今まで溜め込んだ不正な金をむしり取られるとしたら?卿ならどうする、ワーレン」
「小官ですか?小官は不正な蓄財などしておりませんが……まあ」
ワーレンのいささか憮然とした答えに皆が微笑む。
「まあ…そうですな、どうせ没収されるなら…と考えるかもしれません」
「そうだな、奥方にへそくりを取られるくらいなら使ってしまった方がいいよな
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