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俺様勇者と武闘家日記
第3部
サマンオサ
小さな淡い想い(???視点)
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皆と遊んでる気持ちになるんだそうだ。そこに僕も入って、一緒に遊ぼうと言ってくれた。
 その時の笑顔が、今でも胸の中に刻まれている。
 と同時に、初めて自分の心とも向き合うことが出来た。そして気づいた。彼女に対する気持ちが、友情以上のものだと言うことに。
 けれど、当時の僕には自分の気持ちを打ち明けることなど出来なかった。僕が出来るのは、隣で一緒に修行して、笑い合うことだけ。それだけでも十分幸せだった。
 ある日、僕は彼女を連れて人気のない空き地にやって来た。僕はどういうわけか物心ついたときから呪文が使えるらしく、ちょうどその時新しい呪文を覚えたばかりだった。
 彼女にそれを見せたくて唱えたら、なぜか彼女は動かなくなった。慌てて元に戻そうとしたがどうすることも出来ず、結局時間がたってから自然に戻って冷や汗をかいたことがある。それ以来、人前で呪文を使うことはやめた。
 そしていつしか故郷に帰りたくないという思いの方が強くなり、いつサマンオサに戻れるかをフェリオに尋ねることもなくなった。
 そして、半年が過ぎたある日。突然フェリオが僕を呼び出し、こう言ったのだ。
「ルーク。お前の父親が、サマンオサの国王の怒りに触れ、兵に捕えられた」
「!!」
「今サマンオサに戻れば、お前も無事では済まないだろう。だが、サイモンの奥方のことが気がかりだ。お前は当分ここにいろ。おれは今からサマンオサに行ってくる」
 頭に鉄の塊を落とされたような気分だった。勇者だった父さんが、どうして捕まった? 母さんは? 今どうしてる?
 様々な感情がない混ぜになって、僕はしばし立ち尽くしていた。そして、反応のない僕を見かねたのか、フェリオは黙ってキメラの翼を取り出してサマンオサに行こうとしていた。
「待って!! 僕も行く」
「ルーク……」
 フェリオも、母さんのことが気がかりなのだろう。そしてこうも考えていた。僕が戻ることで、精神的に弱っているかもしれない母さんが元気になるのではないかと。
「……わかった。じゃあ、一緒に行こう」
 僕はすぐに家に帰る準備をした。このとき僕は、もう二度とこの家には戻らないだろうなと言う根拠のない確信があった。
「ルーク、準備は出来たか?」
 言われてあ、と思い出す。もし会えなくなるのなら、最後にミオと別れの挨拶をしなければならないじゃないか。
「ちょっと待って。行く前に、ミオとさよならしたい」
「……時間がない。諦めろ」
 ぴしゃりと言い放つフェリオの言葉に、僕は二の句が告げなかった。
「……はい」
 物わかりのいい僕は、こんなときまで何も言えなかった。もしこのとき彼女に会っていれば、こんなに後悔することはなかったのかもしれない。
 そして僕は、彼女と会うことなくサマンオサに帰った。結局フェリオの手助けもあり、僕と母
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