第3部
サマンオサ
小さな淡い想い(???視点)
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ックにしてある。その錠前も僕が自作したものだ。
後ろを振り返り、傷みが激しすぎて傾きかけている自分の家の外観を眺めながら、僕はあまり気乗りしない面持ちで仕事場へと向かう。
僕の母親コゼットは、元々穏やかで、心の優しい人だったそうだ。しかし最愛の恋人サイモンが魔王退治のため旅に出たときは、行って欲しくないと駄々をこね、散々泣いてすがりついていたという。その恋人が何年かして家に戻って来たとき、彼の世間の評判は最悪だったが、それでも母は愛を貫き、結婚して子供まで産んだ。けれどそんな二人を心から祝福してくれる人は身内を含め誰もおらず、さらに彼女の夫は困っている人を放っておけない性分で、僕が生まれてからもほとんど家には戻って来れなかったという。そして次第に夫からの愛情を疑うようになり、孤独となった母の精神は次第に極限まで達していた。
僕が7〜8歳位のとき、彼女は初めて僕に手を上げた。きっと積もり積もったストレスが、僕の些細なイタズラで爆発したのだろう。しかしそれ以来彼女は僕に手を上げることはしなかった。その代わり、僕の前で笑顔を見せることは少なくなった。
それでも機嫌のいい日は美味しいご飯を作ってくれるし、近くの公園に連れてってくれたこともあった。ただ、感情の起伏が激しく、ちょっとしたことで白が黒に変わることも頻繁にあった。
そんな中、かつて僕の父の仲間だったと言う人が現れた。旅に出ていた父が彼に僕ら親子のことを話していたようで、もし何かあったら助けてやって欲しいと頼まれたそうだ。
だったら早く家に戻って母さんを安心させてやればいいのに、と子供ながらに思ったが、思うだけで実際に父親にそんなことを言える度胸などなかった。それに自分が我慢すればいいと思っていたので、父にこれ以上期待することはしなかった。
だが、僕たち親子の様子を見た父の仲間は、これは異常だと訴えた。しばらく母と子を離した方がいいと考えた彼は、今自分が住んでいる村に一度行かないかと僕を誘った。
母を一人残すのは少し躊躇ったが、新しい環境への憧れもあった。僕は彼??フェリオと共に、遥か遠い地カザーブに行くことになったのだ。
「はいよ。今日の給金だ」
今日の日雇い仕事が終わり、契約よりも大分少ない金額に顔をしかめるが、口には出さない。下手に文句を言うとすぐにクビになる、ここはそんな国だ。
高い税金にむちゃくちゃな法律、物価が上がれば国民の不満も爆上がりだ。しかも少しでも国の不満を言おうものなら、問答無用で処刑される。
僕が子供の頃から、この国はこんな状態だ。と言っても、それ以前は今と真逆で、国民にとってとても住みやすく、皆が王さまを慕っていたと言う。そんな時代を知らない世代の僕にとっては、信じられない話だ。そんな僕は18歳を迎えても、まともな職に就けない
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