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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第99話 格の違い
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……来期予算が議会を通過してからも、詳しく話を聞かせてくれるね? ボロディン中佐」

 残っていた最後のチキンフライを手に取ったトリューニヒトの笑顔は、実に毒々しくて到底お近づきにはなりたくないものだった。





 自分の仕事のお陰と言われると、気恥ずかしさ以上に言葉の裏を勘繰りたくなるが、予定通りに来期予算は議会を通過して成立した。国防委員会ビルの内部各所もホッと一息といった雰囲気に包まれており、それはやはり国防委員会の一部署である国防政策局戦略企画部参事補佐官室も同じであるはずなのだが……

「ボロディン中佐への面会希望者が後を絶たなくて大変ですわ」

 チェン秘書官はそう笑みを浮かべながら、先程まで来客が飲んでいたコーヒーカップを片しに給湯室へと消えていく。あまりにも多い来客に俺はコーヒーだと間違いなくカフェイン中毒になると思って、チェン秘書官に全部カモミールティーそれも少量で出すように指示をしたのだが、二日後にはアルーシャ産の一級ティーバック二〇袋入りが五〇パック、しかもご丁寧にジャーマン種とローマン種が差出人不明で別々に届けられた。勿論、真新しい来客用ティーカップ一揃えも一緒に送られてきている。

 これは賄賂になるのだろうか。俺は軍民外部の、特に軍需関連企業からの来客には最初に口利きは一切しないし、こちらはお願いするばかりで優先的な便宜は図れませんよ、と言っている。大抵の人達はポカンとし、またそのうちの半分以上の人が困惑したまま帰っていくのだが、残りの半分は『ええ、ええ、心得ておりますよ』といったしたり顔で帰っていくのだ。

 そして一方的に送られてくる品物については、テンプレの礼とお断りのポストにサインを書いて付けて差出人にそのまま送り返しているのだが、今度は差出人なしで送られてくるようになってしまった。

 こういった場合、どう対処すべきなのか。マトモに同期の現役法務士官に聞けば重箱の隅をつつかれて、俺の手首に手錠がかけられるのは分かっているので、ご機嫌伺いに実家に戻った時レーナ叔母さんに聞くと、

「本来は商品全部破棄すべきだけど、拾得物扱いというのが慣例ね。事情を話して建物の管理監に預けた方がいいわ。誰が何を持ってきたかが分からない上に、ヴィクが誰にも便宜を図らなければ、今の同盟の刑法では贈賄が成立しないし。面会者から受け取るとしてもお茶菓子とかその程度ね。高級品や現金はダメよ。その場で拒否ね」

 誰にも便宜を図るどころか、こちらはバリバリ官製談合の繋ぎ役をやっているご身分だ。確かにやっているのは受注調整であって、特定の誰かに便宜を図っているわけじゃない……と主張するのは流石に無理がある。収賄よりも先に、官製談合防止法や公契約関係競売等妨害罪に問われるのは間違いない。

「それでボロ
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