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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第99話 格の違い
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自らを忌み嫌う敵対者であっても、また自分が不利な状況であっても、交渉することを躊躇わない。節操なしと言われれば実際その通りだが、少なくともウィンザー夫人のような『政治の理論を知らない政治家』ではない。

 一番の問題はフェザーンだ。原作通り事態が進むとは限らないにしても、地理的な条件とルビンスキーの存在は変わらない。彼らの生存理念は敵対する二勢力の中間にあってこそであって、二勢力が『講和』して直接交易を始めてしまえば、フェザーン回廊の存在価値は著しく低下する。

 フェザーンの歴代指導部はその政治的地位と回廊の存在価値を安定させるため、帝国・同盟双方への政治工作を行ってきた。原作がこの世界での現実になるかは分からないが、少なくとも地元の女に手を出した駐在武官を辺境星区に島流しにかけることができる相手だ。既に選挙民としての地球教を利用してフェザーンがトリューニヒトを操っている、と考えてもおかしくはない。

 故にフェザーンとトリューニヒトが現時点で命令型の主従関係なのか、それとも対等な協力関係なのか。それでこの質問に対する危険度は大きく変わる。

トリューニヒトがどのような野心を持とうと主従関係であるのであれば、俺の考えはフェザーンにとって存在を揺るがしかねないと判断されるだろう。直接の暗殺は流石にないだろうが、また人事に干渉して年平均戦死率二〇パーセントの前線哨戒隊に飛ばされるくらいのことはありうる。
 一方で対等な協力関係というのであれば、イゼルローン回廊の出口においては緊張を維持しつつも直接大規模戦闘を起こさないような『冷戦状態』を成立させることで、フェザーンの存在価値を棄損することなくほどほどの平和を実現できる。

 冷戦を成立させる為には、敢えてイゼルローン要塞を攻略する必要はない。両勢力がフェザーンの調整するバランスを保って併存するには、イゼルローン要塞と言う錘はやや大きい。持ち主が変わるだけで大きく天秤は振られる。今は帝国の皿の上に乗っているが、『双方の』皿の上に載っていた方が安定はむしろ取りやすい。

 戦争による両国の疲弊の上に、人類生存域の宗教的な統治を目論む地球教の思惑について、トリューニヒトもルビンスキーも利用するだけ利用してやろうというスタンスだった。トリューニヒトはキュンメル事件の情報を憲兵隊にリークしたし、ルビンスキーは自分の上に支配者がいること自体を嫌う。

 大規模会戦が減少し、帝国・同盟双方の政情が安定すれば人口が増大へと傾き、経済規模自体が拡大する。そうなればフェザーンは商売のパイを増やすことができる。一極支配にあって独占的な権益を確保するほうが得と考えるかもしれないが、政治的・軍事的覇権を持つ者の心持一つで吹っ飛ぶような代物だ。だいたい覇権の持ち主が他者に独占的な権益を与えるわけがない。分割
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