第99話 格の違い
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たのは良かった」
俺がチキンフライ好きであることを事前に調べていておきながら、さも偶然であると言う。堅苦しい思想信条や学歴などではなく、もっと身近なところで相手との共通項を持とうとする仕草。
穿った見方と言えばそれまで。だが同じチキンフライであっても、フェザーンに赴任した時のけばけばしい接待とは一線を画す遣り口。バックである教団と長老会議での争いを実力で勝ち上がったルビンスキーと、常に選挙という大衆の支持を必要とするトリューニヒトの、これが違いだろう。
「インスタントヌードルの風味や塩分も、私は悪くないとは思うんだが、やはりそればっかりと言うの体には悪いしね」
「もしかしてトリューニヒト先生は豚骨ヌードルがお嫌いなのですか?」
「勿論、嫌いではないよ。味は濃厚で疲労回復と胃の満足感の両方を満たせる。だけど正直、毎日食べたいとは思わないね。動脈硬化や高血圧になるリスクが高い」
フフフッと含み笑いをしつつ、人好きする笑顔を浮かべたトリューニヒトは、鶏チャーシューにフォークを突き刺して俺を見ながら笑みを浮かべる。
「その点、鶏肉料理は低カロリーで高たんぱく。また素材としてもどのような料理にも合わせることができる」
「なにしろ屋根の上にもいますから」
「何事においても頂上にいるというのは悪いことではないと思うよ。自然と視野は広くなるからね。うん。しっかり味付けされているのにさっぱりしているこのチャーシューは、いつ食べてもいいね」
「同感です」
自分に向けられた皮肉と受け取ったか、それとも俺の自虐と受け取ったか。食事中の暗喩に詰まったり、感情を波立たせることなく、さらりとかわせるところは只者ではない。俺も何事もなかったようにチキンフライに手を伸ばして口に運ぶ。胡椒の絡みと生姜の辛味、しっとりとした衣と変わらぬ味は心を落ち着かせる。
「ボロディン君。あぁ、食べながらでいいよ。ちょっと聞きたいんだがね」
二個目のチキンフライに手を伸ばそうとした時、スムージーを傾けていたトリューニヒトが問いかけてくる。
「アイランズ君から聞いたんだが、軍人が国家戦略目標を自律的に立てて行動しようとすれば、政治家の首に荒縄のネックレスがかかるだろうという事なんだが、本当にそう思うかね?」
アイランズから聞いたというより、袖口に付けられたボタンを通じて、実際に聞いたのだろう。否定しても良かったが意味もないし事実であるので、俺は失礼を承知でそのままチキンフライを口に運びながら首だけで頷く。俺の様子にトリューニヒトはおどけた表情で肩を竦めた。
「言ってることは結構物騒な話だと思うけど、君は随分と落ち着いているね」
「軍事独裁政権という代物は長い歴史の中で幾つもありました。まだ政治家と軍人という区分がはっきりと定義されていな
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