第二章
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「絶対にな」
「まだそう言うか、本当に頑固だな」
「頑固で悪いか」
「悪いから言っているんだ」
マオイも言い返す、だがここでは決着はつかず話は中断となった。だがそれはあくまで中断でしかなく。
マオイと老婆はまた言い合った、それでも埒が明かずマオイは遂に決意した。
「こうなったらやってやる」
「やってやる、ですか」
「いつも通り」
「そうされますか」
「こうした時はやるしかない」
自身の館で仕える者達に答えた。
「俺のいつものやり方でな」
「そうですか、ではです」
「そうされて下さい」
「まだあの方には見付からない様にして下さいね」
「マオイ様ならと思われているでしょうし」
「わかっている、婆さんの家に忍び込むが」
そうするがというのだ。
「その時は小さな蜘蛛に化けるからな」
「わからないですか」
「あの方にも」
「左様ですか」
「歳を取って目も悪くなっている」
だからだというのだ。
「小さな蜘蛛が家の中にいてもだ」
「それならわからないですね」
「では、ですね」
「この度は」
「そうする、そして月と海が皆の望む通りにある様にする」
こう言ってだった。
マオイは老婆の家に行った、そうしてだった。
こっそりと小さな蜘蛛に化けて家の中に忍び込んだ、そのうえで月が入れてある壺を見付けると一旦元の姿に戻り。
壺を開けて月を出してだった。
パンの木で蓋をされている海にはその蓋を外した、すると。
月は空に上がり海は流れ出た、すぐにそれぞれを司る神が定まりどちらも正しく世にある様になった。
老婆はこの状況に怒って突きを海を出したマオイに怒った。
「わしが扱うと言っていたであろう」
「しかしあんた俺が家に忍び込んでわかったか」
マオイは老婆にこのことを告げた。
「蜘蛛に化けたが」
「わからんかったわ」
「そうだな、それだけ目が悪くなっていたんだ」
「歳でか」
「そうだ、そんな風だとな」
それこそというのだ。
「月も海も間もなくだ」
「満足に扱えなくなるか」
「そうなっていた、だからな」
それ故にというのだ。
「もうだ」
「わしは隠居してか」
「月も海もな」
そのどちらもというのだ。
「それぞれ司る神が決まったんだ」
「それならか」
「安心してな」
それでというのだ。
「あんたは隠居しろ」
「ううむ、司る神も定まったなら」
それならとだ、老婆も観念して言った。
「わしも諦めるしかないか」
「そうだ、後は任せろ」
「ではな」
頑固者の老婆も遂に納得した、こうしてだった。
月と海は常に世界にある様になった、そうなったのはこの時からである。ニューギニアに伝わる古い話である。
隠されていた月と海 完
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