第三章
[8]前話
「この話が伝わってじゃ」
「鰐がそのまま鰐ではなく」
「鮫となったんじゃろうのう」
「そういうことですか」
「わらわが思うにな、しかしな」
「しかし?」
「悪知恵は働かせんことじゃのう」
碧は兎に言った。
「くれぐれも」
「このお話ですね」
「そうじゃ、いらん悪知恵を働かせてじゃ」
そうしてというのだ。
「こんな神話ではじゃ」
「怒った鮫達に生皮を剥がれました」
「そうじゃのう」
「いや、そのことは私もわかってまして」
「自分自身のことじゃけえ」
「それで、です」
主にあらためて話した。
「反省しまして」
「それでじゃな」
「今はご主人様に神具としてお仕えして」
そうしてというのだ。
「世界を救うお助をしています」
「心を入れ替えたんじゃな」
「そうなります」
「ええことじゃ」
碧は兎のその心構えを素直に褒めた。
「ならこれからもじゃ」
「そうしていくことですね」
「真面目が一番じゃけえのう」
「そうですね、ではご主人も」
「わらわもか」
「あの、最近は誰彼なくお声をかけられることはなくなりましたが」
「芥川君にか」
緑もわかっていた。
「何かあると初夜を言うのはか」
「ご自重を」
「わらわは真面目に言うてるんじゃがのう」
「それはわかっていまうが」
兎にしてもだ。
「旗から見て好色にしか見えません」
「おのこと手をつないだこともないがのう」
「それでもです」
「真面目に好色は違うか」
「世間はあまり思わないですね」
「難儀じゃのう、まあ真面目にやることはな」
兎の言葉に見るべきものはしっかりと見ていた、そのうえで応えた。
「やっていかんとな、わらわも」
「そのことをご理解頂ければ」
「わかったけえ」
兎に応えてまた飲んだ、そして唐揚げも食べた。鰐のものではないがその唐揚げも実に美味いものであった。
因幡の白兎 完
2023・11・13
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