第四章
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「そこからですから」
「凄まじい批判が起こったのは」
「そして支持率が暴落したのは」
「それからですから」
「色々噂も出ましたし」
「実はナチスを支持していただの」
「クランと関係があるだの」
「俺はナチは嫌いだ、クランはいい組織だ」
これがミッチェルの返事だった。
「入っていないがな」
「そうした思想がです」
「発言にも出てです」
「今回の事態に至った原因です」
「訳がわからないぞ」
実際彼は全くわかっていなかった。
「どういうことだ」
「そう言われましても」
「もうです」
「今回のことは」
「事務所の前にいつも抗議している連中が殺到してだ」
見れば今も何十人もいる。
「演説をすれば来て家にもだ」
「来ていますね、マスコミも」
「抗議団体も」
「人権活動家も」
「牧師や神父や大学の先生もな、俺の何処が悪い」
ミッチェルは忌々し気に言った。
「二次大戦の英雄だぞ」
「あの、英雄でもです」
「人種的偏見がありますと」
「どうも今のアメリカでは」
「あの時はよくてもか、ふざけるな」
ミッチェルはまた怒鳴った、だがここで。
抗議する者達が暴徒化してだ、事務所に雪崩れ込んできた。
「レイシストがいたぞ!」
「レイシストを許すな!」
「神の裁きを与えろ!」
「今ここでな!」
彼等はミッチェルに殺到した、そして。
反撃で銃を持ちだしたところでだ、誰かが言った。
「殺すつもりだ!正当防衛しろ!」
「よし、容赦するな!」
「殺せ!殺される前にな!」
「薄汚いレイシストを殺せ!」
「うわっ!」
これがミッチェルの最後の言葉だった、彼を護る筈のスタッフ達の前でだ。
まずは石が頭を直撃した、その激痛に身体を屈めると。
誰かが股間を思いきり蹴り上げた、二つのものが潰れる音がした。
そこから群衆達は悶絶し倒れ込んだ彼を囲み殴って蹴った、服を切り裂いて全裸にして事務所の外に放り出した。
その時にはミッチェルはもう死んでいた、片目は潰れあちこちが骨折し腫れ上がり髪の毛は毟り取られ歯は殆ど折れて舌は引っこ抜かれていた。
その無残な亡骸もマスコミに報道された、抗議団体に発砲しようとして正当防衛でそうなったと言われた、それでだ。
ミッチェルは歴史に名を残した、攻撃的なレイシストと。彼を称賛する者は誰もいなかった。薄汚いレイシストは最後に銃を出そうとして逆に正当防衛で死んだ。そう言われるだけだった。
ほじくり出される過去
2023・11・14
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