第一章
[2]次話
ほじくり出される過去
その市長選挙は彼が出馬を宣言した時点でもう決まったと言われた。
「トーマス=ミッチェルだな」
「彼で決まりだな」
「他の候補者とは知名度が違う」
「そして名声もな」
「何しろ第二次世界大戦の英雄だ」
マスコミ関係者達は口々に言った。
「多くの戦いで軍を勝利に導いた」
「勇敢な軍人だ」
「戦争中どれだけマスコミに取り上げられたか」
「その活躍をな」
「その彼が立候補するならな」
「もう決まりだ」
眼鏡をかけ理知的な学者を思わせる痩せた顔立ちで中背で痩せた一見すると元軍人に見えない彼をこう評した、黒髪は短く清潔な感じだ。
ミッチェルはスーツも似合っている、彼は選挙事務所で高らかに笑ってそのうえでスタッフ達に話した。
「圧倒的だな」
「はい、支持率は」
「ミスターがダントツです」
「七十を超えています」
「誰に投票するかとの調査では」
「そうだな、俺がだ」
ミッチェルは笑ったまま言った、見れば目の光はかなり強い。
「立候補したらな」
「決まりですね」
「第二次世界大戦のヒーローが」
「ファシスト達を打ち破った英雄が出れば」
「そうならない筈がない、それでだ」
ミッチェルはさらに言った。
「わかっているな」
「はい、これで終わりじゃないですね」
「市長で」
「そこからですね」
「市長で政治家の実績を作ってな」
そうしてというのだ。
「上院議員、長官それかだ」
「ホワイトハウス」
「プレジデントですね」
「その座に就きますね」
「そうなるぞ、アイクみたいにな」
アイゼンハワー、その二次大戦で一番の英雄の名前を出した。
「なるぞ」
「そうですね」
「絶対に」
「ミスターは」
「ああ、そのはじまりだ」
今はというのだ。
「ここで終わらないぞ」
「市長では」
「当選がスタートですね」
「ミスターにとっては」
「まさにな」
こう言うのだった、そしてだった。
彼は自信満々で市長選挙に挑んでいた、市長に当選することは確実だと確信していた。だが急にだった。
支持率が驚くまでに下がった、それはもはや暴落と言ってよかった。彼はこの事態に驚いて言った。
「おい、どうしたんだ」
「支持率が暴落しています」
「七十以上あったのが今では三十を切っています」
「対立候補のフランシス=ユウキが優勢になっています」
「今はそうした情況です」
「何であのジャップが優勢なんだ」
ミッチェルはその対立候補について忌々し気に言った。
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